トーナメント二回戦、VS松“凶宴”。この前はああ言ったけど、相手は私でも知ってる有名な元PK、赤鉄の鬼人…冗談抜きで、一筋縄ではいかない相手だ。不本意ながらハセヲのやる気を出すような出来事が先日ありましたので(私と松のデートを阻止すべく)、きっとうちの死の恐怖だって健闘するだろう。
今回もシラバス、ガスパーと共に観戦している。今日の解説者はあの欅だった。試合はというと、ハセヲが優勢に見える。松が銃剣を使うことは分かっていたので、こちらは素早い双剣で応戦し、相手に攻撃の隙を与えない。それが、今回私とハセヲが立てた作戦だった。
しかし、やはりというか、松はそんなに簡単に終わるような相手ではなかった。


「いいねぇ…久しぶりにギラギラしてきたぜっ!!」


松はまだ本気を出してないからね。そう言った本日の解説者である欅の言葉に、私は若干冷や汗をかいた。銃剣をしまった松は、私の方を見て(この観客の中、よく見つけられたものだ)、大きな声で叫んだのだ。


「メイカ!!!見てろよ…、俺の真の力をな!!!」
「……なんなのよ…」


モニターが試合から私へ向けられる。ちょっと、なんか観客から注目されてるんですけど。振り返り私を見たハセヲはそれはそれはものすごい形相でして、…後で怒られそうだ。溜め息をつく私の傍で、シラバスとガスパーはあわあわと狼狽えていた。

── ああ、そういうことだったんだ。

松が、大剣を開放したのだ。あれはPK時代に使っていた、大剣 ── 赤鉄。PK時代の彼の二つ名、その異名はこれから来ているのだ。メインウェポンを背負い、ハセヲに切り掛る松の鬼気迫る姿、その重い一打一打に息を呑んで見守った。


「…それでも、負けないもんね。」


── 中盤どんでん返しがあったものの、ハセヲチームは見事勝利を納めた。膝を付く松の姿。ハセヲは踵を返す。続いて選手が退場し、帰ろうとするシラバスとガスパーに一言断ると、私はアリーナの入口に待機していた。私が待つ人物は、


「お疲れさま。…負けたっていうのに、いい顔してるね」
「はは、…おう、吹っ切れた」


…松。残念そうに肩を落とし、彼がやってきた。如何してずっと大剣を使わないのかと、不思議に思っていたけれど、やはりそういうことか。彼は月の樹に入団して、大剣を封印していたのだ。榊の為に、…PKだった頃の自分と決別する為に。今回、その大剣を開放しても、ハセヲに負けてしまった訳だが…そのお陰か彼は後腐れなく吹っ切れたみたいで、その表情には何だかほっとした。ハセヲは嫌がるかもしれないけれど、二人はいいライバルのようで。ハセヲを相手に戦っている松の姿は、


「…ちょっと、かっこよかったよ」
「本気かよ!!!?!!?!メイカがそう思ってくれてたなんて、」
「いや、ちょっとだから、ちょっと」


少しだけ思ったことを口にしてみた、ちょっと褒めたらぐいぐいと迫り来る松に苦笑いしていると、殺気立ったハセヲがやってきて私と松の間に割り込んだ。


「おい、ハセヲ!いい戦いだったよな?」
「…ふん、しぶとすぎんだよ!オメーは!!それとメイカに近付くな」
「試合は負けたけど、メイカのことは諦めねぇからな」
「は!?諦めろよ!!!」


松は悪態をつきながら、戦いの記念だと言って、ハセヲに赤鉄をプレゼントしていた。いらねーよ!とごねるハセヲを置いて、松は去っていく。後日談になりますが、この後暫く、ハセヲは赤鉄を使っていました。


「…メイカ」
「ひっ、…はい、ハセヲ様何でございましょうか」
「いつの間に松と仲良くなったんだ」
「いや、だからそんなに仲良くないって」
「聞いてねぇぞ」
「怒らないで落ち着いて」



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