「人間相手に憑神を使うことがどんだけ危険か、だとよw」


まぁ、俺自身、やり方を変える気は無いけど。ハセヲはそう言って笑った。

── 三爪痕を倒すための手段として、私達が切望していた力“憑神”を、彼は手に入れた。このトーナメントに参加する理由のひとつでもあった憑神の覚醒を成功させた彼は、手段を選ばず早速その力を一般PCへ行使した。結果、ボルドー達は特に意識不明等に陥ることはなかったが、本来ならばその仕様を逸脱した力、やはり一般PCへと使うことは危険なようだ。そうクーンに言われたというのだから間違いないだろう。今回は運が良かっただけ。恐らく、アトリの叫び声に一瞬躊躇した、というのも要因かもしれない。…私には詳しく分からないけれど。


「メイカ」
「…うん?」
「メイカは、俺を否定したりしないよな?」


…ハセヲは純粋なのだと思う。

クーンと違って、私は憑神を持っていない。彼らと同じ土俵に立っていないのだから、出過ぎたことを言ってはいけない。何を言ったって結局、戦うのはハセヲなのだ。私では、ない。ならば私はハセヲが望むように、彼を信じて傍に居よう。出来ることなんて、他にないのだから。彼の隣に居る為に、彼が信じてくれる私でいる為に、臆病者の私は勿論だよ、と返事をした。

ハセヲとカナードの@homeへ行くと、既にシラバスとガスパーがいた。ハセヲに拍手とお祝いの言葉を送ったので、私も改めて、一回戦突破おめでとうと伝えた。


「おめでとう!と、ごめんなさい……」


ガスパーは、ハセヲに頭を下げていた。自分はハセヲに任せ切りで、何もしなかったからだと。…そんなの、私も同じなのに。俯いた二人を慰めるように、俺はカナードのギルドマスターだからな、そう言ったハセヲ。何だか以前の彼とは少し雰囲気が変わった気がした。だとしたら、きっと二人の影響だろう。ハセヲの言葉に二人は大喜び。尻尾をぱたぱたと振るガスパーの頭をひたすらに撫でた。


「じゃあ、俺はレイヴンに呼ばれてるから行くけど、メイカも来るか?」
「うーん、時間はあるけど、…」


“レイヴン”。またの名を“G.U.”。ハセヲやパイ、クーンが身を置く、憑神を有するプレイヤーが集まる、そして憑神を有するプレイヤーを集めることを目的としているギルド。この世界のあらゆる権限を与えられたCC社のプレイヤーが身を置いている。ハセヲの力を覚醒させ、そして三爪痕に関しての有用な情報を提供してくれる彼ら、…その代わりにハセヲは人身御供。互いの目的の為に、ハセヲは彼らに協力することとなっている。私が行ったところで何の役にも立たないのだ、ハセヲに全て任せ切りなのは申し訳ないけれど、…やめておくよ。と誘いを断る。

丁度いいからと、事前に調べておいた最近PKが頻繁に出没するというエリアへ向かってみることにした。



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