「はい」
「、なに?」
「なにって…」


誕生日プレゼント。彼女は今確かにそう言った。自分の眼前には彼女が突き出している包みがあって、ご丁寧に言い訳をしてくれている(何日も前から用意とかしてないから)(たまたま思い出しただけだし)俺の表情は緩みっぱなしだ、鏡を見なくても分かる。いや、まさか、あのナマエから誕生日プレゼントだなんて。誕生日を祝ってもらえるなんて。こんなの予想できなかった。


「早く受け取りなさいよ」
「あ、ああ…」
「…ふんっ」
「なぁ」


なかなかプレゼントを受け取らない俺に痺れを切らして、彼女は包みを俺の胸に押し付けた。普段慣れないことをしているせいか、顔が真っ赤だ。可愛い。その顔を見られないようにと反らすその仕草に心惹かれて、そっと腕を掴んで引き寄せた。ぽすりと俺の胸に収まる彼女は珍しく抵抗の色をみせない(普段なら「勝手に触らないで」とか言って大騒ぎである)。俺は少しばかり調子に乗って、背中に腕をまわして強く抱きしめてみた。ナマエはうう、と小さく呻き、今日だけなんだからね、と言って俺の背に腕を回した。…何だこの生き物。俺を駄目にする。


「スキって言って」
「はぁ」
「いいだろ?」


頬を真っ赤にした彼女の口から、先ほどと同じセリフが呟かれた。



(…スキよ)(ああ、俺も)(……誕生日おめで、と)(ありがとう)(…もう離しなさいよ)(まだ)




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