ふと気付いたときには、ここにいた。…墓地。あれ、私何でここにいるんだろう、と思った時には座り込んでいた。ある人のお墓の前で。


「クラ、サメ…」


声に出して読んでみる。始めて口にした名前だ。なのに何故か、胸がぎゅっと締め付けられるような感覚に襲われた。なんで?この人だれ?
そういえば、私たちの隊長は最近亡くなったと聞いた。その名前がクラサメ…だったような。まぁ、亡くなっているのでその隊長サンとの記憶なんてさらさらない。それは勿論その隊長サンが特別じゃない。先の戦争で多大な被害が出て、幾人も私の記憶から消えた人物がいる。それだけいなくなったっていうことだもの。隊長サンだってきっと例外ではない。


「あ、あれ…?」


例外では、ないのに。
私は自分の首から下げていたロケットを無意識に握りしめていた。手を開いて、離すと、それはパカリと勝手に開いた。中には、男の人の写真。振り返って、こっちを見ている。この人は?もしかして…この人が隊長?この人が、クラサメ?
ぽつり。ロケットに水滴が落ちる。雨が降ってきた?いや、この水滴は、私の涙だ。なんで私は泣いているんだろう。ただどうしようもなく、心が、痛い、苦しい。わからない。なぜ痛いのか苦しいのか、この人のことを思うと、胸の中がざわざわしてぎゅーってなる。クラサメさん、貴方は私にとってどんな人だったの?忘れているはずの私をこんなにする貴方は。




「よし今だ!…カシャ」
「ナマエ、何をしている」
「やば、見つかった」
「テストから10点減点するぞ」
「た、隊長!嘘でしょっ!冗談きつい!!」
「赤点だったらつきっきりで補習してやる」
「それはそれでおいしいけど…隊長の写真ほしかったんだもん」
「だからといってマスクを外してるときに撮るんじゃない」
「隊長隙なさ過ぎなんだよ、今シャッターチャンスだったの」
「ではロケットごと回収するか?」
「やだー!!せっかくもらったのにー!!」
「冗談だ。大切にしてくれ」
「当たり前です!隊長がくれた初めてのプレゼントですもん!」




「ナマエ、ここにいたんだね」
「あ…、レム」
「雨降ってきそうだよ、早く中入ろう?」
「ん、わかった」




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