「ありゃ」


エースなら裏庭で寝てたよ、とケイトに聞いた私は一目散に裏庭にやってきた。腕にたくさんの羊皮紙と教科書を抱えて。勿論、勉強を教えてもらうため。勇んでやってきたのはいいけれど、いざ起こすとなるとなんだかとても悪い気がしてきたもので。


「(クイーンも忙しそうにしてたからなぁ…)」


クイーンはどうやら面白い本を見つけたとかで、嬉しそうに、それはそれは分厚い辞典のようなものを読み漁っておりました。さすがに私の管轄外すぎて、勉強を教えてほしいと言い出せる雰囲気では、なかったのです。
エースはすやすやとお眠りになっている…小さく名前を呼んだり、肩を軽く叩いてみたけれど、やっぱり、折角寝ているのを起こすのもなぁ。「しょうがない、トレイにでも聞こう」よいしょ、と呟きがてら羊皮紙と教科書を抱え直し、踵を返す。

と、同時に、腕を引かれてバランスを崩した。手元からは抱えていた羊皮紙と教科書がドサドサ落ちて…いや、そんなの確認する暇もない。私の目の前にはエースがいた。あれ、寝てたんじゃ


「起きてたよ?」
「(笑顔がこわい)」
「それよりトレイのところに行くって?どういうこと?」


勉強を教えてもらおうと思って…と若干引きつった笑顔で私が答えれば、許さない、と黒い笑顔でエースが答える。掴まれた腕が痛い。


「僕がいるのに、ナマエはトレイのところに行くんだ?」
「(なんかスイッチ入っちゃってる)」
「自分が誰のものかわかってる?」


ああ、エースがものすごく機嫌悪い。普段、みんなの前でこんな顔しない、こんな発言しないエースが私の前でだけ見せる面。…もといエース様(と私は呼んでいる)。掴まれた腕は痛かったのに、今抱きしめる腕はこんなに優しい。よく、わからない。


「僕から離れたら駄目。わかった?」
「…うん」
「何笑ってるんだ」
「…いや、エース嫉妬したの?」
「馬鹿馬鹿しいこと言うな」


そういって私の頭を小突くエース様の耳が少し赤いのを、私は知ってる。




(エース、勉強教えて?)(やだ)(えっ!?)(僕を不機嫌にさせた責任とってくれるなら、考えるけど?)(はっ!?)(うん、じゃあまずキスして)(なっ!?)




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