「ナマエ」
「はい」
「間違ってる」
「…むー」
「むーじゃない」


どうしてもできない科目(魔法基礎。ついていけたのは入門までです)がある。そしてどうしても補習とかやりたくないのである。できないから嫌いで、隊長も怖いからである。ということで、裏庭でお昼寝してたエースを叩き起こして勉強を教えてもらうことにした。寝起きのエースは非常に機嫌が悪く毒舌気味になるのだが…あまり気にしないようにする。
0組教室、私たちはいつもの場所に座ってクリスタリウムから(勝手に)持ってきた参考書をつついている。ちらりとエースの顔を盗み見てみた。肘をついて、いかにも不機嫌、という感じ…。


「何見てるんだ」
「ばれた」
「そんなに見つめられたら誰だってわかる」
「…そんなに見つめてた?」
「ああ」


そこでようやくエースは微笑んだ。仏頂面よりこっちのほうが全然いいよなーと思いつつ、私もへらっと笑顔を返した。そのままエースは私の頭をぐいと掴み「こっち見てないで、教科書を見ろ」と言った。そんなことはわかってますー。ただちょっと気になっただけで。


「気になった?…何が」
「…エース怒ってるかなーって」
「は?」
「寝てたの、起こしちゃったから」
「…そんなことか」


いや、そんなことって。エースにとっても私にとっても、貴重な自由時間なんだから、有効に使わなきゃいけない。私の場合はその自由時間も、勉強しなきゃいけない羽目になっているが…エースはその必要ないから。無理矢理私に付き合わせたようなもんであって。エースはまた微笑んでから、「ナマエが勉強をしてくれればな」と言った。頭が上がりません。


「ナマエ、意外と可愛いこと考えてたんだな」
「ちょっと。馬鹿にしてるでしょ」
「ああ、してる」
「うわっいい笑顔」
「気にするな、この時間は僕がナマエを一人占めできる唯一の時間だから」
「…えっ」
「役得。だろ?」


ぱっとエースから顔を背ける。何言ってんの、もう。恥ずかしい。赤くなった顔を見られないようにと参考書に視線を移すと、隣のエースはくすくす笑っていた。もう一度だけエースの顔を盗み見てみるが、もう不機嫌そうな顔をする様子はなかった。




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