朝から嫌なものを見た。ナインが女の子に話しかけられてるところを目撃した。

最近、私たち0組が魔導院で注目されだしてから、男にも女にもこういう――他の組の人に話しかけられるような――ことが増えていた。私然り。だから至って普通といっても過言ではない…その程度の光景のはずだった。

家族同然の0組のみんな。みんな大好きでみんな大切。みんなそう思っている。でも私は、たった一人にだけ、そう思えなくなっていた。それがナインだった。私なんかがいくら頑張っても、所詮は家族。家族が、彼女にはなれない。そんな当たり前の法則に、私は苦しんでいた。だって、こんな不変なもの、いくら頑張ったって覆せるわけないから。


「オイ」
「えっ?…ナインか」
「どーした?お前顔色悪ィぞ」
「なんでもなーい。寝不足かなー?」
「ったく…」


あんま心配させるんじゃねーぞ。先ほどの女の子を放って、私のところへナインが来てくれた。…家族だから、こうやって贔屓してもらえる。もし赤の他人だったら、私はあの女の子みたいに放っておかれるんだろうなぁ。そう考えたら、なんだか泣けてきてしまった。


「は!?なんで泣いてんだよ!」
「あ、あれ…おかしいな…」
「お前やっぱなんかオカシイぞ。どっか痛ぇのかよ?」


ふるふる、と首を横に振ると、ナインはぶっきらぼうに涙を拭ってくれた。やっぱり駄目だ。私ナインが好きだ、もうこんなに溢れてる。でも駄目なんだ。これは伝えちゃいけない想い。私はこれからもナインの家族でいなくちゃいけないから。


「ナイン…」
「なんだよっ」
「…おなかすいた…」
「はぁ!!?」


自分の分と私の分の朝食を取りに行ってくれるナインの背中が、涙で滲んでよく見えなかった。見た目怖いし態度も悪いけど、そうやって優しいところが、ほんとうにだいすきなの


「ごめんね…」


すきになってごめんなさい。いつかこの感情を殺せるかな。




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