「泣くんじゃねーよ」


泣きもするわ、馬鹿。私の前に立っているこの男はナイン、彼はこれから死にに行くという。「オイ、勝手に決め付けんな」死ぬ覚悟をして、魔導院の背後、突然出現したあの謎の建造物、万魔殿へ向かうという。人間では入れないというあの場所へ。そんなところへ行ってしまったらもう、会えないかもしれない。帰ってこないかもしれない。死ぬかもしれない。これが泣かずにいられるか馬鹿。


「やだ…」
「やじゃねぇよ」
「やだよ!やだやだ!絶対やだ!!」


行かないで。だって、なんでナインが。なんでナインが死にに行かなくちゃいけないの。今は誰もがアギトを望んでて、そのアギトに一番近いのは0組かもしれない。でもナインが死んだらどうするの。私が忘れてしまったら。
忘れるなんて、嫌だ。ナインのことを忘れるくらいなら死んだ方がマシだってくらい、嫌だ。好きなのに、こんなに好きなのに、ナインが死んでしまったら、もう私は誰をこんなに好きだったかも忘れてしまう。それがとても怖いの。


「あのな」
「…っうん」
「帰ってくる、絶対にな」


お前のところに帰ってきてやる。だから笑って待ってろ。ナインが言った。ふふ、たまにはカッコイイこと言うね。いつも馬鹿っぽいことしか言ってない癖にさ。こんな状況なのに、いや、こんな状況だからかもしれない。彼が頼もしく見えたから、涙を拭いて、ちょっとだけのっかってあげることにした。


「思いっきり暴れてきなさいよね!」
「任せとけ」
「そんでこの世界なんか、ぽーんと救っちゃってね!」
「そんなんよゆーすぎんぞコラァ」


そう言って彼はいつものあの笑顔。私に背を向けると振り返ることなく進んで行った。仲間の元へと。何を言っても、決めているんだもの。私が何を言ったところでだめなわけだ。そういえばナインはそういう頑固な人だったなぁ。私も笑った。

ねぇ、きっと。
きっとかっこよく世界救ってぱっぱと帰ってくるんだ。だから私は何にも心配することなんてないよね。



私は正しいことをしました(ディーヴァ、これしかなかったのですか)




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