「何回言ったらわかるんだよコラァ!」
「そーれーはーこっちのセリフだっての!!」


珍しくナインがクリスタリウムに入ってきたなーと横目で見ていて、さほど気にせず本を読んでいた私。久しぶりに面白い本と出会えてうきうきしていたのだが、彼はそれを見事にぶち壊してくれた。私の腕をつかみ、外へ行こうと言うのだ。はぁ?私は今此処で本を読みたいと言うのになんてことを。早急に掴まれた手を振りほどいてその申し出を断った。するとどうだ、彼は怒鳴り始めたのだ。ここがクリスタリウムということなんてお構いなし。私も最初は周りの人の迷惑とか考えてたけれど、一方的に言われ続ければ腹も立ち…ということで互いに大声で言い争っていた。


「大体お前は本ばっか読んで全然鍛錬してるとこ見ねぇよな!」
「アンタこそ馬鹿みたいに鍛錬ばっかでちっとも勉強してるとこ見ないけどね!?」
「んだと!?」
「何よ!?」


勿論私たちを止めようとする人なんていない。というか、私も彼もこの性格なのだ。喧嘩するのは初めてじゃない。いつもはこんなところに都合よく誰か(0組の)が通りかかってくれるのだが今日はそれがない。私たちの言い争いは激化していく。迷惑そうに額に皺を寄せてこちらを睨む人もいれば、巻き込まれないように必死に目線を反らしてる人もいる…のだが私たちには見えていない。この目の前にいるムカツク野郎にメンチ切りあい罵り合い、はぁ、だいぶ損してるよな、この性格。…お互いに。


「アンタなんかだいっっっきらい!!」
「俺もだ!!」


ものすごい勢いで顔を背けあって、ナインは去っていった。ちらり振り返ると、クリスタリウムから出て行こうとしている彼の背中が見える。…そういえば、彼は何の用事で私に話しかけてきたんだろうか。自分からクリスタリウムに来るわけないんだ、ナインが。私に何か話すことがあってわざわざここまで来て、外へ連れ出そうとしたんだろう。その結果に辿り着いたとき、私は本を棚に戻し、去っていく彼の背中を走って追いかけた。


「ナイン!!」
「あぁ!?んだよ…」
「アンタね!用事も言わないで…気になるから聞きに来てあげたわ!!」
「るせぇな…何でもねぇよ!気にすんなっ」


暇だったから、お前と話したかっただけだ。…私の呼びかけで立ち止まった彼はそれだけ言うと再び歩き始めた。何よそれ。言い逃げってわけ。こちらを振り向きもしない彼に苛立ち、私は急いで駆け寄りナインの腕を掴む。驚いたのか遂に振り返った彼の顔を見て目を合わせて、「後ねぇ!!」と続ける。


「ナインが嫌いとか、嘘だから!!」
「うるせぇ!俺もだ!!」


すなおになれません。




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