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「ふふっ。今更何を怖がるの?君みたいな労働力になりそうもない子の使い道なんてコレしかないでしょう?」
「や、やめ…っ、ヤダ…っ!クソッ…離せよ…っ!!」
「それともまだ現実として見てなかったの?だったら君は馬鹿を通り越してもう笑うしかないみたいですね?」
強張る身体を割り入って固く閉ざした窄まりに指を押し当てる。
具合と反応から見るにどうやら初物らしく、商品価値が下がるなぁなんて思ったがまぁ顔は小綺麗だから売れ残ることはないだろう。
潤滑油なんて持ち合わせてるはずもなく、申し訳程度に唾を垂らして変わりにする。
乾いたそこに一気に二本突き入れれば言葉になっていない劈くような悲鳴が。
断末魔のように声をあげるが彼はこんなものまだ序盤であるとわかっているのだろうか。
気にせず無理矢理動かせば滑りが出たから、どうやら裂けてしまったようだ。
さて、彼はどこまで耐えられるだろう?
少しだけ踊った心に下半身に熱が帯びたが、まさかそんな趣味嗜好を持ち合わせていただなんてジャーファル自身驚きだった。
*
ボロ雑巾のように転がる少年はもう意識はないのか爪先で小突いたところで反応を示さない。
経験のない彼にいきなりアレでは刺激もショックも強すぎたのか、呼吸音すら弱々しい。
汚れた手をただのボロ布となった少年の服で拭いたが大して綺麗にはならず、しょうがないからヒラヒラと手を振って水気を飛ばす。
弱々しく咳き込んだ少年を一瞥してジャーファルはポケットからリストを取り出した。
パラパラと捲って名前を探せば、どうやら少年はアリババと言うらしい。
アリババ、アリババねぇ…と何度か小さく呟いて少年を覗きこみ汚れた顔を指で拭えば、血の気の引いた白い肌がピクリと痙攣した。
まぁただの反射のようなものだったらしく目覚めることはなかったが。
このまま放置するわけにもいかないから、少年の身体を持ち上げて檻へと運ぶ。
気絶しているから当然なのだが大人しくジャーファルに身を任せていた。
なんだか少しつまらない。
……つまらない?
何故そんなことを思ったのだろう。
動かすたびにチャリ…チャリ…と鳴る鎖の音を聞きながらジャーファルは首を傾げた。
反響する悲鳴。
頭を過る牙を剥く彼の表情。
それらを見るのは高揚したのに、今は大人しい彼に違和感すら感じる。
屈しない意思。
弱いくせにわきまえない。
愚かしいまでにもがき抗い、その先にあるものとは何だろう。
ぐるぐると思考は巡り、ふと当てはまったものを見つける。
そうか、これはある種の好奇心であり、ただの嫉妬だ。
それは忘れていた感情だった。
思い当たれば簡単で、腕の中で眠る少年に感じたのは熱情。
衝動のまま半開きのままの唇に口付ける。
今は好き放題為されるがままだが、噛みちぎってくるのかと思えば笑えてきた。
嗚呼、彼はどんな反応を示すだろうか。
何をすれば堕ちるだろうか。
あっさり壊れてくれるなよ、そんなの白けるじゃないか。
欲情にも似た興奮がジャーファルの身体を走り、頬には思わず笑みが浮かぶ。
服従なんてしようものなら下衆な豚の所に売り払ってやる。
でももし、目覚めた彼がなおもあの目で此方を見るなら…
「……私が君を買ってあげるよ。アリババくん?」
クックッと笑いながら言った言葉は彼には届くことはなかったが、名案だとジャーファルは目を細めたのだった。
Cry for the Moon
ジャーファルは鎖を引く。
痛みも苦しみももう慣れた。
今更何も怖くはない。
少年は重い鎖をつける。
絶望と悲観の中で、それでもなお生きていた。
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