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こうやって屈辱と逆らえば更なる痛みが待っていると学習させれば大抵の奴隷は大人しくなる。
当然だろう。
人間も所詮は畜生と変わりなく、危険だとわかれば本能的に回避しようとするのだから。
学習能力は本来生き長らえるための能力だ。

なのに…



「…ざっ、けんな…っ!クソ野郎…っ!!」



少年はなおも反抗的な目を向けて、なんとかジャーファルを振り払おうともがいた。
体勢の不利に加えてたかだか少年の力がジャーファルに敵うわけもないのに、ギラギラと獣のように目を光らせて喰い殺さんばかりに。


嗚呼、いったい彼はどれだけ殴ればわかるのだろう。
こっちだって痛いのに。


踏みつけていた足を離すと少年は這いずるように必死に逃げ出す。
鎖をジャーファルが握っていることを忘れていたのだろうか。
グイッと引けば後ろに倒れ仰向けに地面に転けてしまった。


鎖を引いて無理矢理身体を持ち上げる。
振り上げた拳が少年の横面を殴る。

言動と思考が一致してない自分にいっそ笑えてきたが、それもこれも全ては慣れることなのだ。
容易くふっ飛んだ少年は転がるように地面に倒れ、ジャーファルは何度も鎖を引いて身体を起こす。

顔にはあまり傷つけれないのであとは腹へと拳を落とす。
嘔吐いたところで吐き戻すものはなく、粘着質な涎と胃液が口から垂れた。


次第に力は抜けていき、鎖を引いても起き上がれなくなる。
けれどもジャーファルは止めようとはしなかった。
彼はこの程度ではまた逃げ出してしまうのだ。
徹底的でなければ意味はない。
地に伏せば丸まる腹に蹴りを入れ、逃げようとすれば鎖を引いて地面を引き摺り引き寄せる。



情けなど忘れて繰り返せば、ヒュ…っとひきつった呼吸をしながら蹲る少年はいつの間にやら血と涙に塗れていた。
踞って表情は見えなかったが、身体はカタカタと小さく震えていたからつまりは恐怖に蝕まれていたのだろう。
何とかやり過ごそうと身を縮め、荒い呼吸を繰り返す。

ジャーファルはそれを暫く見下ろしていたが少年の側にしゃがみこみ、そっと伸びた髪に触れた。
打って変わった優しい手付きで顔にかかる髪を払ってやる。


「……君って可哀想な子だね。忠告は無視。慣れるのは痛みにばかり。そうやって変わるものはありました?」
「は、ぅ…っ、ぁ…、」
「もうやめておきなさい。ね?そしたら存外楽になれるよ?良い人のところに売ってあげるから安心をし。」


そのまま泥と血でぐしゃぐしゃになったそれを指で遊びながらクスクスと笑う。
甘い金色の髪の毛はこの辺りでは珍しく、傷付いていないことを確かめるように柔らかくなぞる。

しかし少年はジャーファルの手をパシッと払い除けると、痛みに歪む顔になんとか笑みを貼り付けた。


「…アン、タって…可、哀想な…人だな…っ、慣れた…フリ、して…諦め、て…っ、」
「……。」
「人、買う野郎ぉ、に…良いも、悪いも…あるかよ…っ!絶対、ここから…っ、逃げてやる…っ!!」


唐突に言われたそれは彼の強がりだったのかもしれない。
震える声は迫なんてなかったし滑稽なだけだったが、彼は本気で言ったのだろう。
その目は相も変わらずギラギラしていて…
随分と諦めが悪いらしい。

ジャーファルはキョトンと驚いたように彼を見つめていたが、クックッと笑って掌で顔を覆った。


「ハハハッ!ごもっとも!でも皆そうするよ?その方が利口だと思うけどな。君みたいにマゾじゃないから痛いのも苦しいのもごめんだもの。」
「……。」
「ふざけんなって顔ですね?じゃあ試してみましょうか。どっちがどれだけ哀れだろう?」
「…っ!?」
「大口叩いたなら簡単に負けたりしないでね?君の言うものの先に何があるのか、私に教えてくださいよ。」


フッと笑みを溢したジャーファルはゴロンと少年の身体を転がして頭を地面に押し付けた。
また殴られるのだろうと歯を食い縛った彼は身心を砕くのが暴力だけだと思っているのか。
己の行く末を知らずによくもまぁそんな口がきけたものだ。


腰だけ高く上げさせてするりと腰を撫でれば少年は何をされるのかと怯えた顔で身構える。
覆い被さるように耳許に口を寄せ力を抜くよう吹き込めばビクッと大きく身体が跳ねた。
なんだか妙に楽しくなって、わざと抱き締めるように密着させる。

服の上から局部を撫でれば流石に何をされるかわかったのか。
少年はようやっとヒィ…っ!?と小さな悲鳴をあげ身を捩った。

鈍いなりにも知識は一応あるらしい。
暴れようとする身体を押さえ付けて下をはだけさせれば外気に触れた身体がブルッと震える。
自覚させるように腰から臀部にかけてゆっくりと指でなぞれば、少年は一層強く逃れようとバタバタもがいた。

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