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「ぐふ…っ!?!」
沈む。
いくらジャーファルと言えども普通の人間である。
無防備な状態で腹に全力パンチを受けて平気なわけがない。
普通に痛い。
すっごく痛い。
嫌な汗が額から流れてきたジャーファルは身の危険をひしひしと感じて慌てて制止の声をかけようとした。
「良い拳だアリババくん!足を肩幅まで開いてしっかり踏ん張れ!そして捻るようにしながら拳を付きだせ!捻る事で威力は増すんだ!!」
「ハイ!!」
が、悪ノリしているシンドバッドと謎の興奮状態にあるアリババが聞いてくれるわけもなく…
シンドバッドの的確かつ悪意に満ち満ちたアドバイスに言われた通りに拳を握るアリババ。
嫌な予感しかしない。
「…ちょ、ちょ、待って…っ、ぐぼぇ!?!」
案の定、制止の言葉など聞きもせずにアリババの拳が腹部にドーン。
アドバイスをきっちり聞いて実行している分威力が増して厄介である。
痛みに唸りながら腕を動かそうとするがシンドバッドにゴリラのように強い力で押さえられているのでビクともしない。
涙目になりながら後ろを見れば頭にウサ耳をつけたシンドバッドが目に入り、ジャーファルは声にならない悲鳴をあげた。
「いいぞ!その調子だ!日頃の不平不満を思い出しながらガンガンやれ!!なくても不満を捏造しろ!ジャーファルに容赦なんかしちゃいかん!Go!」
「ハイ!!」
「え!?酷…っ、ぐふぅ!?!」
「一点を狙えアリババくん!いろんなところを打ってもダメージにならないぞ!?」
「ハイ!!」
「ちょちょちょ、マジ洒落になら…うぐっ!!」
「コイツにはいろいろ面倒かけられたからな!俺の日頃の鬱憤も込めて思いっきりやっちゃってくれ!!」
「ハイ!!」
「た、たんま…っ、ぐふっ!!!?」
「その調子だアリババくん!さぁどんどんいこう!!」
「ハイ!!」
「ちょ、まっ…ぎゃあぁあああ!!!」
(※ジャーファルさんが大変なことになっておりますので今暫くお待ちください※)
「「………。」」
数分後。
グッタリと壁に背を預けながら項垂れるジャーファルを覗きこみながらシンドバッドとアリババは言葉を失っていた。
ちょっとやり過ぎたようである。
ジャーファルが先程からピクリとも動かない。
こ れ … ま さ か …
嫌な予感が頭に過ったアリババは、ゴクリ…と唾を飲み込んでシンドバッドの方に視線をやった。
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