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「こんなもんどうして持ってるんですかシンドバッドさん…」
「よく似合ってるよ?」
「嬉しくないです…」
「語尾はピョン☆だ。わかるな?」
「……わかんないピョン…」
「イイヨー!!アリババくん可愛いよー!!イイヨー!!」
「シンドバッドさんキモいピョン…」
「……何故だろう。その格好でキモいって言われると妙に興奮するね。」


ウフフ!と頬を染めているシンドバッドにアリババは露骨に嫌そうな顔をしながら数歩後ずさった。
変態…っ!と思わず溢すと、シンドバッドはウフフ!ウフフ!と笑いながら顔を両手で覆ってニヤニヤしている。
どうやら逆効果だったようである。

アリババは自分の中のシンドバッド像が音をたてて崩れ去っていくのを感じていた。


そんなアリババの頭にはフワフワの真っ白なウサギの耳がつけられていて、気持ち悪そうに首を横に振るたびにゆらゆら揺れていた。
首には赤い紐の代わりに蝶ネクタイとつけ襟という…
実にあざとい素晴らしい光景。
これでレオタードさえ着れば完璧なバニーちゃんだ。

シンドバッドはシャッ!シャッ!とティッシュを取って鼻を押さえながらウフフ!と笑みを溢した。


「それは俺のお気に入りのAV『うしゃたんのお・し・り〜深夜のヌレヌレパラダイス〜』のおまけで付いてたヤツなんだ。クオリティ高いだろ?あ、R20だから君にはまだ早いぞ?」
「……。」
「ちなみにレオタードもあるんだ!後ろには勿論尻尾付きだ安心してくれ!着る?着てみる!?網タイツもあるよ!?穿いてみる!?穿いてみよっか!?」
「心底気持ち悪いピョン…」
「うむ、罵られる度に股間の相棒が元気になっていくのを感じる。」
「感じるじゃないですよ!!何なんですか!?何で俺がこんな格好しなきゃなんないんですか!?」
「お色気作戦だよ。ウサたんにメロメロなジャーファルくんだからな、アリババくんも同じフィールドに立たないと勝てないぞ?君は今からウサババたんだ!可愛っ!」
「……アモン…お前の刃をあんな変態の汚い血で汚すことになるが…我慢してくれな…」
「待て待て待て、アモンはしまいなさいアモンは。…あぁしかしウサ耳とナイフと言う異色の組み合わせがまた萌える…」
「今この場で始末しとかないと駄目だと判断しました。貴方のような男を世に出すわけにはいかない。」
「まぁ待て。落ち着け。Be cool!!」
「十分に落ち着いた上での判断です。」
「ごもっともだ!でもね、これはアリババくんのために言ってるんだよ?」
「ハァ?」
「ジャーファルくんとられちゃってもいいのかな?ん?」
「……。」


シャッシャッシャッとティッシュを追加しながらジャーファルの方を指差すシンドバッド。
アリババが視線を向ければ此方のことなどまるっと無視してウサギのぬいぐるみにスリスリ頬擦りするジャーファルが見える。

ジャーファルさん…とおずおずと声をかけたところでまるで聞こえてないように。
かつてない事にアリババはパチパチと瞬きを繰り返しながら呆然と見つめる。


しかしそれは次第に怒りに変化。
うっとりとウサギのぬいぐるみを見つめながら可愛いだの愛してるだの囁いているジャーファルにイラッときたアリババは目にいっぱいに涙を溜めながらダンッ!と大きく地団駄を踏んだ。




「絶対ジャーファルさんをメロメロにしてやるピョン!!!」
「ひゅー!頑張れウサババたん!!」
「おぅ!!まっかせといてください!!」



フンフンと鼻息荒くジャーファルの元へと向かっていくアリババ。
そこにあるのは可愛らしさと言うか最早勇ましさなのだがこの際そんなものは関係無い。
面白ければオールオッケーである。

と、言うかだからヤムライハが解毒薬を作るのを待てばすべてがまぁるく収まるのだが興奮状態にあるアリババは気付かない。
まぁ、面白ければオールオッケーである。

こうしてアリババの闘いが始まったのだった。

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