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「HEY!HEY!HEY!?アリババくん!?君何しようとしてるのかなそれ!?それで何しようとしてるのかな!?」
「ジャーファルさんが俺のこと捨てやがった…っ!その酬いを受けてもらいます…っ!」
「ヤダ待って!?その発想怖いんだけど!!ヤンデレなの!?アリババくんヤンデレなの!?」
「ジャーファルさんだって私を見ろだの私を求めろだの俺に言ってたくせに…っ!そのくせ自分はあっさり俺を捨てるのか…っ!?許さん…っ!!絶対許さん…っ!!」
「もうヤダこの子!落ち着いてくれよ!アリババくんを捨てるわけないだろ!?薬のせいだから!な!?」
「だからどうしたって言うんです…!?そんなもん気力でなんとかしろよおぉおおお!!!」
「無茶言うな!ジャーファルも人間だぞ!?アリババくんとにかく落ち着いてくれ!君らしくもない!!そこはかとなくジャーファル相手にしてる気分だ!!」
「あはは…っ、あははは…っ!」
「……え、ヤダ怖い…」
「大丈夫です俺は落ち着いてます冷静です。その証しに今はっきりとジャーファルさんの心臓がわかるんです。ほら、あそこで脈打ってる。アハッ。
ひ と 突 き で 終 わ ら せ ま す よ …」
「え!?ウソ!?ヤダ何この子!?本当怖い!!」


かつてない程異常な方向に取り乱したアリババ。
シンドバッドはカパッと掌で口許を覆って助けを求めて辺りを見渡した。


が…


誰一人見当たらない。


さっきまで皆いたのに…



毎度お馴染みに面倒事を押し付けられ一人にされたことに気付いたシンドバッドは本気で泣きそうになりズンッ…と鼻を啜った。

門前にはナイフを構えてジリジリと近寄ってくる瞳孔のかっ開いたアリババ。
後門にはウサギのぬいぐるみとちゅっちゅイチャイチャしているデレデレ顔のジャーファル。
その気持ち悪い空間の真ん中に何故かいるシンドバッド。

彼のいろんな意味での恐怖がおわかりいただけるだろうか。




「あぁなんて愛らしいんだろう…フワフワの毛並み…少し垂れた耳…完璧とは君のことを指すんでしょうね…」

「ジャーファルさんが俺を裏切った…っ!あんなにデレデレしやがって…っ!キー!!」

「無口な君も愛おしい…あぁ一時も君から離れたくない…っ!!」

「あの野郎…っ!ブスッとやってやんよチクショウ…っ!」

「あぁああ可愛さがノンストップ!」

「ぶっ殺す!!」



好き放題ワァワァ言ってる馬鹿共の声が聞こえる。
その中で取り残された俺がいる。
嗚呼…なんでこんなことに…


そう思った瞬間、プチン…とシンドバッドの中で何かが切れる音がした。

次の瞬間から彼の意識はなく、気付いた時にはアリババの頭に全力で拳骨を落としていたのであった。




*




「……落ち着いたかいアリババくん?」
「はひ…頭が痛いでふ…っ!」
「俺も拳が痛いよ。だからおあいこだね?」
「……。」
「お あ い こ だ ね ?」
「ズビバゼンデジダ…っ!」


しゅんしゅんと泣きながら頭に出来た大きなたん瘤を押さえているアリババ。
本気で痛かったのかくしゃくしゃに顔をしかめてしょんぼりしている。

その表情に先程のような可笑しさはなく、ようやっと元に戻った彼にシンドバッドはハァ…と大きな溜め息を吐いた。



さて、これからどうするかだ。



どうするもこうするもヤムライハが解毒薬作るの待つしかないんじゃない?と思うかもしれないが、そうではない。
彼が言っているのは面倒事を押し付けられた苛々や一人っきりにされたモヤモヤをどう処理するかであって、つまりは憂さ晴らしである。

どうせめんどくさいのだから少しは遊ばないと損だ。
俺だけ可哀想な目に合うなんて絶対嫌だ。
お前ら俺をこんな目に合わせたこと後悔させてやんよ。


ビイィイっ!!と黒いルフ的なものがシンドバッドの周りに終結。
こうして覇王による復讐劇が幕を開けたのであった。

*

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