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「確保おおぉおおお!!!何としても阻止してくれぇえええ!!!」



突然のシンドバッドの悲鳴混じりの声に八人将はビクッとしながらも阻止しにかかる。

が、アリババの方が速かった。
アモンを使って炎の壁を作り上げ対抗。
部屋の中で炎を出すなんて馬鹿かコイツ!と思いながらもこれでは近付くことすら出来ない。
シンドバッドは炎のギリギリに立ち青い顔で手をワタワタと動かした。


「アリババくん!?アリババくん!?!これを何とかしてくれ!今ジャーファルにいなくなられると誰が仕事するんだ!!俺じゃね!?俺だよ!!絶対嫌だ!!困る!!」
「嫌だぁ!!ジャーファルさんは俺のだあぁああ!!一緒に旅するんだあぁああ!!」
「国外出てく気満々じゃないか!!やめろ!アイツ一人いなくなったらどれだけ大変かわかるか!?」
「俺だって鬼じゃないです!!一年くらいしたら戻ってきますよ!!一年ジャーファルさんを俺にくださいっ!!俺のもんだ!!」
「一年もいなかったら国が潰れるわ!!いやむしろ俺が壊れるわ!!アリババくん、メッ!」
「ヤダヤダヤダヤダー!!」


眠っているジャーファルをぎゅっと抱き締めて駄々っ子のように喚くアリババ。
可愛いからって何でも許されるわけではない。
ジャーファルがいなくなるのは死活問題だ。
主に仕事的な意味で。


ピャーピャー言い合いをしていたその時だ。
騒ぎ過ぎたのかジャーファルが小さく唸って身を捩った。

ヤバイ。
これはヤバイ。




「誰か何とかしてくれえぇええ!!!」




響く王の悲鳴。
広がる混乱。
その真ん中でうっとりとジャーファルの顔を覗きこむアリババ。

ぎゅっと眉を寄せたジャーファルの目蓋がゆっくりと開いていく。

ドキドキとアリババの鼓動が張り裂けそうな程高鳴る。
この目が自分を捕らえた瞬間、ジャーファルは自分のものになるのだ。
今だかつてない緊張と興奮がアリババを支配する。


ゆっくり、ゆっくりと。
銀色の睫毛に縁取られた目蓋が、上がっていく――







今まさにその瞳がアリババを映そうとした瞬間、飛び込んできた物体。



「ふぐぅ!?!」



それはベシャッとジャーファルの顔面にめり込む勢いで激突。
痛みに唸りながらそれを顔から退けたことにより、ジャーファルが最初に見たものとなってしまった。

ジャーファルはそれを手に持ちながらジィ…と見つめた。
そして、コテンと首を傾げる。



「……ウサギの…ぬいぐるみ…?」



そう、それはなんと部屋に飾ってあったウサギのぬいぐるみだったのだ。
咄嗟に投げた人物はマスルール。
ジャストヒットしたことに小さくガッツポーズをしている。

ジャーファルはジッと暫くそれを見つめていたが、突然ぎゅっと胸にかき抱いた。
どうやら無機物でも有効だったようである。




『あぁああぁああ!?!!!?!』




本日何度目にもなる悲鳴がシンドリア国内に響き渡ったのであった。

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