小説 | ナノ


「おい翠、それ取ってくれ」
「ああはい、どうぞ…ちょっとそっち押さえて」
「おう、すまんあれも頼む」
「はいはい…あ、それこっちに頂戴」

「……ねえしんべヱ、センパイたちすごいねぇ」
「うん、ぼくぜんぜんわかんないや〜」
「僕も……。アレとかソレとか、なにがなんだかさっぱり……」
「まさに以心伝心ってヤツだな」
「なんだか夫婦みたいだねぇ」
「あ〜、ピッタリかも!じゅくねん夫婦だね!!」
「用具いいんかいの、父上と母上かぁ……」

くすり、思わず口元に笑みが浮かぶ。横の委員長に視線をやれば、こちらも堪えきれないというように唇がほころんでいた。頬や耳にかすかに差した赤みが精悍な顔に少年らしさを添えていて、いつもより少し幼げに見える。二人で目配せして、気付けは同時に吹き出していた。

「…だってよ?食満」
「お前と夫婦か、…悪くはないな」
「そうね、それであの子達が子供ならなおいいわね」
「だな」
「けど以心伝心の種明かしはしておこうかしら」
「え?」

「あなたたち、あれは以心伝心でもなんでもないのよ。例えばしんべヱ、壁を直すときにはまず何をするかしら?」
「ええっと、…骨組みですか?」
「正解!じゃあその時には何を使うの?平太」
「え、え…縄を使い、ます」
「よろしい!じゃあその後はどうするのだった、喜三太?」
「はい!泥で壁を作ってぇ、乾いたら漆喰をぬります!」
「はい、バッチリよ!つまり作兵衛、以心伝心の仕組みっていうのは何だと思う?」
「あーっと、作業の順序を確り把握しておきゃ、補助や必要な道具の受け渡しは難しかぁない…ってことっすか?」
「その通りよ。みんな、よく出来ました!」
「そっか〜、じゃあセンパイたち、夫婦じゃないんだね〜」
「でも、それなら僕たちも…がんばれば、できそうだよね」
「ほんとだぁ!よぉし、僕たちも『いしんでんしん』できるようにがんばろ〜!!」

「翠先輩、もしかして一年生の意気を高めるために…?」
「うふふ、なかなか上手くいったかしら」
「上手くいったたぁ思いますけど……あの、食満先輩があっちで凹んでんのはどうすりゃあ…」
「あらあら、……まあ放っていてもいいんじゃないかしら」

上げて落とされるのが一番辛いのですが

*131208 すまとめ。でも食満くんこんなキャラだと思ってる



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