小説 | ナノ


「おや、一郎太くん。…どう、西瓜でも食べていかない?」

は?え、えーと…と言い澱んでいる間に幼馴染み(とはいえ高校生なのだが)は俺の手を掴んで歩き出していた。どうやら彼女は俺の返事など必要としていないようだ。空いた片手にはスイカがまるまる一玉。…俺のとは違う、多分もう俺のより小さい手にぶら下がっていて、なんだか見ていられない。

「持ちますよ。重いでしょ」
「大丈夫だよ、私の方が年上だし」
「じゃあ俺は男ですから」

…そう?ありがとう、と笑った翠さんはそのままスイカを手に入れた理由などを話してくれた。それにしてもこのひとはいつも他人の目を見て話すからすこしばかり居心地が悪い。

「あのね、この西瓜八百屋さんで買ったの。今年は西瓜少なかったしあまり食べてないから、無性に食べたくなってね」
「そうですか…さっき買ったなら温いんじゃないですか?」
「や、ほんとは帰って冷やして食べるつもりだったんだけどさ、一郎太くんみえたから」
一緒に食べたいなって。ぬるくても好きな子と食べたらおいしいもの。ただいまー。

「あの…宇治川さんって変な人ですよね」
「そうかな?」

そうだよ。
(だって、)

俺はあなたにしかどきどきしないんだから。





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -