小説 | ナノ


ああなんだか君にあいたいな、とふと思いました。
くのたま長屋の屋根から見る月は頼りないほそいほそい三日月で、私の目を眩ませて星をかき消すことはしません。
それは喜ばしいことなんだけど、…なんだけど。
いつも髪の毛からかおる土のにおいとか、夜着にしみついたほのかな花のかおりとか、じつは日に焼けた肌の色とか、とにかくきみを構成する要素に触れたいな、と思います。
きっと君はまた穴を掘って同室の彼に怒られているんだろうなあ。

さみしい、とこいしい、をはんぶんずつ。

そういえば君にふれたいな、とふと思い立って。
中庭に掘った穴の中から見上げる星は明るく輝いていて、僕のその思い付きを後押しするように見えます。
穴のふちに手をかけて体を持ち上げたら、…なんだか。
ふと鼻をくすぐった君が好む花の香りだとか、ちょっとしたときに思い出すきみの笑い方とか、君はあまり好きじゃないと言っていたけどやわらかい体とか、君を作るすてきなものたちを愛したいなあ、と思いました。
近くに咲いていた君が好きな花を一輪手折って、君を探しにいこうかなあ。

いとしい、とあいたい、で一歩目を。

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恋しい恋しい、さみしい?


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