小説 | ナノ


「あなた、なんだか最近おかしいわよ。…いいえ、おかしいのは前からだったわね」

うちの事務が出勤するなり俺の顔を見てこんなことを言う。あいかわらず酷いなあ。
前の俺だったらちょっといらっときてたかもしれないけど、今の俺は寛大だから許してあげる。というのを込めて一笑に付す。ああほら波江が声を出すから俺の膝の上の天使ちゃんがもごもごしてるじゃないか。
天使ちゃん(いつの間にか俺の家にいた)はとてもとてもとてもかわいい。愛くるしいつぶらな瞳、短くてやわらかな手足、ぷりぷりと歩くたびに揺れるまあるいおしり。そこにくっついた尻尾はまるでどこかのドーナツ屋のもちもちドーナツみたいで柔らかい。
どうもげっ歯類みたいでこの前はマンションの柱を齧ってしまっていた。本人(?)も無意識だったらしくて、俺が声を掛けたら(天使ちゃんの痕跡がそこに残されたと思うと声が震えそうだった)もうそれこそ全身で飛び上がって物陰に逃げ込みこちらを伺っていたんだから可愛いってもんじゃない。もう兵器。俺の心臓木っ端微塵。天使ちゃんマジ可愛いマジ天使。とはいえ天使ちゃんがずっと気まずそうにこっちを見てくるのが可哀想で(そんな天使ちゃんもすごく可愛かったんだけどね!)歯を削る用の硬いクッキーとか買ってあげちゃったんだけどね!お気に召したみたいでほら、今も胡坐をかいた俺の膝に手をついて手や腹に鼻を擦り付けてくるんだからもうなんか俺死んでもいいかもしんない…!!
「びぱ、…びぱー?」
ちょっと明後日のほうを見ながら俺の天使ちゃんについて考えてたら天使ちゃんったらもう心配して俺の頬を舐めてくれちゃったよ!ああもうかわいい!ほんとは今日は池袋まで出てシズちゃんをからかう予定だったけどもうどうでもいいや!!今日は俺天使ちゃんとイチャラブするよ!とりあえずそうだな、まずは波江を帰らせて、それから俺と天使ちゃん二人っきりでご飯を食べようか。その後は一緒にお風呂に入って、ブラッシングして、ソファに座って映画でも見よう。そうしよう。よしそうと決まれば、

「波江さぁん、今日はもう帰っていいよ」

さあこれでここは俺たちのパラダイス!

**企画:怪獣と君 さまへ!
気持ち悪いくらいビッパ溺愛の情報屋さんを目指して。
たぶんこんな情報屋さんなら新宿も池袋も平和。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -