小説 | ナノ
夏は暑い。だからアイスがうまい。冬には非難されてばかりだった私の好物も一躍脚光を浴びている。おひさま園でもアイスの消費量がものすごい。
かくいう私も翠と一緒にアイスを食べている。愛するひとと二人で好物を食べる…なんと幸せなことだろう。
しかし、しかしだ。私は年頃の男であって、隣でアイスを食べているのは恋人であって、翠は棒アイスを食べていて、アイスを咥えるときやわらかく形を変える桃色のくちびるとか、溶けかけたまわりを舐め上げる赤い舌とか、どこかとろりと焦点を狂わせた涙に覆われたような瞳とか、うっすら汗をにじませた肢体とかがとにかく私の理性を狂わせる。
――ぱたり、翠の頬から滴り落ちた汗が首を伝い落ち鎖骨を通って、胸元の少し開いたゆるめのタンクトップから覗くやわらかそうな双丘のあいだに、
「ちょっと風介!?なにを、」
そう、夏は暑い。だからアイスがうまい。私の好物が、うまい。つまりはそれだけの話である。
*131101→掲載150812
季節外れ過ぎて仕舞ったまま忘れてたやつ。
推しキャラは緑川だったけど、微妙な不思議ちゃん感にガゼル氏も好き。
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