小説 | ナノ


私は多分、所謂キス魔というやつだ。
初対面の人とか嫌がりそうな人には控えるようにしているけど、ありがとうとかがんばれとか、そういうことにほぼ必ずちゅーがつく。外国で暮らしてたことはないし、おそらく家庭環境のせいだろう。仲睦まじい両親を持って私幸せ。
そんな私が鋼の意思でもって意地でもキスしないひとがいる。おんなじ帝国学園でおんなじサッカー部で、いっこしたの後輩。麿眉とヘッドホンが特徴的な、成神くん。
ノートを借りたときにほっぺちゅーした佐久間や源田、辞書を貸してくれたときにおでこに(だって出てて広くてしやすそうだった!)辺見には「何を今更」って言われそうだけど、好きな人には好きって言ってからキスしたい!乙女心である。
そんなマイハニー(異論は認める)成神くん、に。

さっきから追い詰められています。何があったし。

「ねえ先輩、先輩って俺にはちょっとよそよそしくないですかぁ?」
「そ、そうかな?」
「そっすよぉ!佐久間先輩とかデコ先輩とか洞面には、もっと…こう…」

勢いよく喋っていた成神くんだけど、いきなり歯切れが悪くなった。何か言い辛いことなのだろうか。顔を赤くしてもごもごと何か言いたげにしている。やばいかわいい。

「みんな、には…ちゅ、ちゅうとかするのに…」
「……成神君?」
「お、俺にはして、くれないじゃないですか」
「え、な、成神くん、」
「なんすか」
「わ、わたしに、ちゅう…とか。されたいの?」

しばらく沈黙した目の前の後輩(私の思い人である)は、その後音を立てるくらいの勢いで赤くなった。心配になった私が彼の顔を覗き込むと、首が取れるんじゃないかと心配になるくらい上下に頷く。

「でも、先輩は俺にだけちゅうしてくれないし、俺のこと嫌いなんでしょ?」
「ううん。…ううん、あのね、成神くん。」

きみがわたしのことどう思ってるか、聞かせてくれたら。

「わたしがきみにキスしなかった理由、教えてあげる。」


110415 ちゅ、


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