再会



数週間ぶりの現世。
そして何十年かぶりのこの場所。
大声で店主を呼べば、眠そうな顔で店の中から顔を出した。



「夜サンじゃないっスか。お久しぶりです」
「久しぶりだねえ、何十年ぶりだろ」
「夜サンが尸魂界から抜け出してすぐでしたから、もう六十年くらいっスかねえ。で、今日はどうしてこちらに?」
「死神代行ってのを見にね」



昨日突然ジジイに呼び出されたと思ったら、現世の死神代行とやらの様子を見て来いと言われた。
話はイヅルから聞いてたけど、一体どんな奴なんだろうか。



「黒崎サンっスね。ちょっと待っててください」
「あー、居場所教えてくれたら自分で行くよ」
「それなら、今学校に居ると思いますよ。空座第一高校っス」
「ありがと、じゃあね」



今日中に戻ってこいとイヅルに言われてんだよね。
喜助ともっと話したいけど時間がない。
私は喜助に教えてもらった場所へと急いだ。



「霊圧が高い奴……って、なんでアイツがいんの!?」



霊圧を垂れ流してるからすぐにわかると言われ、窓の外から中を覗けばすぐに見つかった。
でも、それよりも目に付いたのは懐かしい人で。
壁をすり抜けて騒がしい教室の中に入れば、その人物は酷く驚いたような顔をした。



「夜、なして此処におんねん!?」
「それはこっちが聞きたいっての、真子」



平子真子、元五番隊隊長にして私の同期。
彼が生きていることは喜助から聞いていたけど、どうして死神代行と同じ学校にいるんだ。
真子の腕を掴むと、教室の中から引きずり出した。



「痛いわ、離せっちゅうねん」
「あーごめん。で、なんでアンタが死神代行と仲良く机並べてるわけ?」
「そんなん、護廷の隊長さんには関係あらへんやろ」



久しぶりに再会した同期の友人。
その瞳は冷たく私を捕えていた。



「じゃあ、質問変えるよ。元気だった?」
「見ての通り、ピンピンや」
「なら良かった。知ってるみたいだけど、私三番隊の隊長になったんだよね」
「やっと戻る気になったんやな」
「半ば無理矢理、だけど」



そう言うと、真子は先ほどとは打って変わってへらりと笑った。
なんだ、ちっとも変わってない。
少し安心した。



「隊長っちゅうんは大変やろ?」
「まあ、大変だね。私の場合副官が優秀だから楽なほうだと思うけど」
「市丸の部下やった奴やろ」
「そうそう、ギンちゃんの部下だけあってしっかりしてる」
「可哀そうになあ……」



空を見上げた真子の横顔は、少し寂しそうに見えた。
そんな彼の背中をバシッと叩くと同時に、聞き慣れない声がした。



「お前、誰だ?」
「君が死神代行だね?私は三番隊隊長の月闇夜。よろしく」



少年に近づいて手を差し出せば、ぎこちないながらも少年は手をとってくれた。
喜助の言った通り、正義感に溢れたまるでヒーローだ。



「三番隊って……」
「そ、市丸ギンの後釜。これからたまに現世に来ると思うからよろしく」
「夜、ほな俺はもう行くで」



後ろ手をひらひらと振りながら、真子は去って行った。
残された私と死神代行の間には沈黙。
彼はきっと、私と真子が親しくしていたのが気がかりなんだろう。



「えっと……月闇さんは平子の知り合いなのか?」
「知り合いっていうか同期。百年ぶりの再会だったんだけどね」
「なら聞きたいことがあんだけど、平子って一体……」
「それは直接真子に聞いてよ。余計なこと言うと真子にも喜助にも怒られるし」



ますます困惑の色を見せる少年の瞳。
たぶんこの少年は真子と同じものを中に飼っている。
だから彼もこの少年に近づいたんだろう。
でもそれは私の口から言うべきことじゃないと思った。



「じゃ、挨拶はこれくらいで。早く帰らないとイヅルに怒られるから」
「ちょっと……」
「真子のことよろしくね、黒崎一護」



何か言いたげな少年――黒崎一護を残し、私は尸魂界へと戻った。
そう遠くない未来、きっとまたこの少年にも真子にも会うことになるだろう、そう思いながら。



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