「で、引っ越しするって?」
『うん』
「ったくわけわかんねえよ、この間までストーカーだとか言って騒いでた癖に」



事情を説明するわけにもいかないので、適当に笑って誤魔化しておく。
仕方ないんだよ、あの時はギンのことなんて忘れてたんだから。



「でも、別にギリアを辞めるわけじゃねえんだろ?」
『うん、市丸さんが総隊長に話してくれて、一応市丸さんの隊に所属ってことになってる』
「一応ってなんだよ」
『さあね、市丸さんの付き人みたいな?』



納得のいかないような顔をしている一護だけれど、まあ放っておけばいいか。
私はギンのたっての希望により彼の部屋に住むことになった。
そのことを一護に言ったら、案の定質問攻めにされたというわけだ。



『一護、ありがとう』
「なんだよ、急に……」



照れくさそうな表情をする一護とも、これからは今までみたいにちょくちょく会うことはなくなるのかと思うと少し寂しくなる。



『たまには遊びに来るからさ。彼女でもできたら紹介しなさいよ……ってそれはありえないか』
「ゆり、何だよそれ」
『冗談だよ。ウチにも呼ぶからさ』
「市丸さんがいるなら勘弁。俺、あの人苦手なんだよなー」
『まあ、そうだろうね』



記憶がないとはいえ、昔は敵だったのだ。
知らず知らずのうちに警戒するのも仕方がない。
挨拶もそこそこに、残りの荷物を手に私は住み慣れたマンションを後にした。



「ゆり、おかえり」
『ただいま、ギン』



今日から私の家となる場所のドアを開ければ、ギンが満面の笑みで迎えてくれた。
やっと辿り着いた場所。
きっと、もう離れ離れになることなんてないと思うから。



「今度はボクが護ったるからな」
『うん』



一度自分を殺した人に今度は護ってもらうなんて、何だか矛盾してる。
それでも、私達の選択はきっと間違ってはいないはずだから。

だから、今度は一緒に。



END







一応「Contradiction」はこれで完結です。
「君と僕とその先と」では結ばれなかった二人の救済でした。
ですが当初の予定ではこの続きがありまして、近々第二部としてUPします。
市丸視点で話を進めて行く予定です。
少し時間がかかると思いますが、気長にお待ちいただけると幸いです。
2011/3/22 華月



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