あれから一週間、ちょっとした任務は舞い込んでくる。
それでも、命が危険にさらされるような任務が回ってくることはなく、ほとんどが偵察のようなものだ。



『ったく、何なのよあの人は……』



あの日、市丸さんがテーブルの上に置いて行った紙切れ。
携帯の番号とアドレス。
恐らく市丸さんのものなんだろう。
彼には悪いけれど、私はまだ大学でやりたいことがある。
その先はまだわからないけれど、できるならば研究を続けていきたいと思っている。
それなのに彼の下で働くなんて無理だ。



「ゆりー」



ガチャとドアの開く音がして、一護が入ってきた。
気心が知れているとはいえ、仮にも女の部屋に勝手に入ってくる彼の神経はどうなっているのだろうか。



『チャイムくらい押しなさいよ』
「悪いな、急いでたもんで」



一護とこうやってまともに会話をするのは一月振りくらいじゃないだろうか。
すれ違って挨拶を交わすくらいだったから。



『どうしたの?突然顔を見せたかと思えば』
「いや、乱菊さんに市丸さんがお前をギリアに入れようとしてるって聞いたから……」



そう言った一護の顔は苦笑いをしているようで、彼もどうやらその理由に気づいているらしい。



『総隊長にね、私が危険な目に遭わないようにって言ったみたい』
「は?」
『別に一護の所為ってわけじゃないと思うよ。元々私たちは特別隊なわけだし』



そう、私たちはあくまでもギリアの本隊ではないのだ。
勝手に辞めることは機密事項を知ってしまっているがゆえに許されないけれど、任務が来ても断ることだってできる。
それでも危険な任務についていたのは、私が了承したから、ただそれだけなのだ。



「でも、ゆりが危険な目に遭ってるってのは事実だしよ……」
『一護がそんな顔しなくてもいいって。選んだのは私。それに、私大学に残るつもりだし』



それは、私がギリアに入らないという意味だと一護はすぐに気が付いた。
少しほっとしたような顔をした彼は、勝手にベッドに腰を下ろした。



「俺、さ……変な話聞いたんだ」
『何?』
「市丸さんってさ、お前のこと昔から知ってるみたいなこと言ってたらしいぜ」



一護の口から出たのは意外な言葉だった。


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