なんで石田くんが死神の目のことを知っているのか。
考えたところで答えが出るはずなんてないことはわかってはいるけれど、考えずにはいられなかった。
ふと殺気を感じて辺りを見回すと右目がズキ、と疼いた。
急いで携帯で本部に連絡をして、バッグの忍ばせておいた短剣を手に標的へと向かう。
しかし、その必要はなかった。



『石田くん……』



私の目の前で崩れ落ちていく標的。
その前には真っ白なピストルを手にした石田くんの姿。



「僕のほうが早かったようだね、霜月さん」



冷たく放たれた言葉と今目にした光景を、私は信じることができなかった。



『石田くんもギリアなの?』
「残念ながら違うな。どちらかといえばギリアは僕の敵だよ」



冷たく、しかし少し寂しそうな笑みを残して、彼は足早に去って行った。
すぐに本部から連絡が来たけれど、標的は滅したとの報告だけして私はあの場所へと向かった。



「真っ白なピストル……ですか」
『何か知ってるんですか!?』



喫茶店ギリア。
ギリアのメンバーの溜まり場と化しているこの場所で、浦原さんに先ほどの出来事を話した。
彼は深刻な表情で考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。



「恐らく彼はあの時の生き残りでしょう」
『あの時?』



それから、浦原さんは昔話をしてくれた。
それは今から50年ほど前、漸くギリアが組織としての形をなし始めた頃。

当時のギリアの内部には二つの相反する勢力があった。
今の総隊長を頂点とする勢力ともう一つの勢力。
結論から言えば、石田くんはそのもう一つの勢力と何らかのかかわりがあるのだろう、と。
最も、彼の年齢を考えればそれは直接的なものではなく、恐らく彼の親あるいはその親がその勢力の中心にいた者だろうと。



『でもたったそれだけのことで……』
「反勢力はほぼ全滅でした。そして、彼らの亡骸は家族に返されることはなかった」



ただ仲間が殺されたというだけに留まらず、その家族までもが悲惨な目に遭わされたという。
そしてそれは、つい10年ほど前まで行われていた。



『酷い……』
「本当に、酷い話っスね。ゆりサンのお知り合いがギリアを怨んでいたとしても不思議はありません」
『やっぱり、彼は敵なんですか?』



言葉を交わしたのは今日が初めてとはいえ、彼はかつての同級生だ。
それに、昔から彼のことを知っていた一護のことも気にかかる。



「現状では何とも言えませんが、ゆりサンに直接何かしたわけじゃない。それに、彼らの生き残りはそんなに居ないはずですから、今まで通りでいいと考えていいっスよ」



いつもの笑みに戻った浦原さんを見て、少し安心した。


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