乱菊さんと話をしていると、また一人、お客さんが入ってきた。
今度は銀髪の子供だ。
その子は乱菊さんに命令口調で何かを言うと、スーツの内ポケットから黒く光るものを取り出して差し出した。
そして、二人は店を出ていった。



「驚かせちゃってすみませんね」
『浦原さん、今の……』



浦原さんの答えを聞くまでもなく、私はあの子供が乱菊さんい渡したものの正体を知っていた。
本物をこの目で見たことはないけれど、あれは間違いなくピストルだ。



「ゆりサンの思っている通りだと思いますよ」



浦原さんは苦笑いをしながら言った。
ここにきて、一護が言っていたことの意味が漸くわかった。
次に案じるのはもちろん自分の身。



『もしかして……私殺されちゃったりするんですか?』



すると、浦原さんも阿散井さんも突然笑いだした。
おかしなことを言ったつもりはない。
怪しげな組織の裏を見てしまった者は始末されるというのが定石ではないか。



「殺したりなんてしませんよ。アタシ達はいわば警察のようなものですから」
『警察?』
「まあ、民間の警察ってとこだろうな」



民間の警察なんて聞いたことがない。
そもそも、ピストルを持っている時点で法律違反だろうと思う。
そんな私の考えを見通したかのように、浦原さんは続けた。



「この世界には表と裏が存在するんです。ゆりサンが今まで生きて来た世界を表とするならば、アタシ達の世界は裏」
『裏って、ヤクザとかそういうものですか?』
「そんな生易しいものだったらこちらも大がかりな組織を作る必要はないんですけどねえ。まあ、ゆりサンのことを殺しはしないとは言いましたけど、αを見られてしまった以上は少しお時間をいただきましょうか」



そう言って、浦原さんは店の扉に鍵をかけた。
再びカウンターに戻って来た浦原さんは、私の目の前に黒いものを置いた。



「これが、さっき日番谷サンの言っていたαです」
『本物……ですよね』
「そうです。一応この国ではこういった類のものは所持禁止になっていますが、アタシ達は例外。公には公表されていませんが、政府に認められた民間組織っス」
「認められたってのは語弊があんだろ」
「そうっスね。認められたというよりは認めざるを得なかったってとこですかね」



浦原さんと阿散井さんの話を聞いていても、全く現実味がなかった。
まるでドラマか映画の世界に入り込んだような、そんな気持ちだった。



「それから、わかっているとは思いますがこのことは他言無用で。最も、黒崎サンは知ってるんで大丈夫っスよ」



最後に浦原さんに釘を刺され、私は店を後にした。


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