「ゆり、遅えよ」
『ごめんごめん』



次の日、授業はなかったけれど友人との約束があったために大学へ向かった。
約束というのは、ただ昼食を奢るというだけのことなのだけれど。



「俺B定食、大盛りで」
『ったく、ちょっとは遠慮しなさいよ』
「賭けに勝ったのは俺だ」
『はいはい』



渋々二人分の食券を買うべく自販機にお金を入れる。
出てきた食券を二枚手にすると、その友人黒崎一護は意気揚々とカウンターへ向かって行った。



「俺が持っていくから、お茶お願いな」
『はーい』



生ぬるい返事をして二人分のお茶を持って席を探す。
ちょうど空いていたのは窓際の席。
座って待っていると、二人分の定食を持った一護がやってきた。



「サンキュー、じゃ、頂きます」
『どうぞ』



目の前で美味しそうにB定食の唐揚げを頬張っている一護には、大学に入って知り合った。
いや、正確には高校も一緒だったので私は認識していたが。
大学に入って地元を出て一人暮らしをするようになった。
そして、何の偶然か隣に部屋に越してきたのが一護だったのだ。



『全く、あんたと違って私はもう授業ないんだから』
「悪いな、今度酒でも持ってってやるよ」



私たちはもう四年生で、来年の春に私は大学を卒業する。
一方の一護は医学部だからまだ卒業ではない。



「そういや、ゆりは大学院に行くんだっけ?」
『一応ね』
「一応ってなんだよ」



卒業するとはいっても、院に進む私はまだ学生のままだ。
もうしばらくは一護との腐れ縁が続きそうだななんて考えていると、昨日の出来事を思い出した。



『そうだ、一護ギリアっていう喫茶店知ってる?』
「ギリア?ああ、浦原さんの店か」
『浦原さんのことも知ってんの?』



まあな、という一護に、昨日の出来事を話した。
すると、思いのほか食いつきが良くて、浦原さんと話した内容を根ほり葉ほり聞かれた。



『何だってそんなに心配してんの?』
「別に心配してるとかじゃねえよ。ただ……」
『ただ?』
「いや、とにかくあの人に深く関わらないほうが身のためだ」



最後に意味深な言葉を残して、食事を終えた一護はごちそうさまと言って席を立った。


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