ここは大学の食堂。 込み合う中で一人で昼食を取っていると、目の前に膳が置かれた。 「ここ、空いてるかな?」 『どうぞ』 ありがとう、と前に座った男性はどこかで見たことがあるような。 けれども思い出せないのできっと思い違いだろうと思い、食事を進める。 ふと前を見ると、その男と目が合った。 「君、霜月さんだろう?」 薄らと笑みを浮かべて目の前の男は確かにそう言った。 思いがけず名前を呼ばれてはっとする。 やはりこの男はどこかで見たことがある。 『石田……くん?』 「ああ、高校が一緒だったね」 石田雨竜。 彼もまた私と同じ高校の出身で、常に学年トップ。 実家は病院だとか言っていたからたぶん一護と同じ医学部だ。 『久しぶり、ってことになるのかな』 「こうやって言葉を交わすのは初めてだけれどね」 頭はいい、容姿もそこそこいい、それでも彼には人を近づけさせないオーラがあった。 まるで世の中の全てを拒絶しているような、闇にもにた感覚。 「驚いたな、同じ大学に居ただなんて」 『そうだね、今まで会ったことなかったしね』 「そういえば黒崎も居ることは知っているかい?」 『うん、家が隣なんだ』 一瞬、ほんの一瞬だけれど石田くんの顔が歪んだ気がした。 すぐに人当たりのいい笑みに戻った彼は、私の右目をじっと見ている。 「その眼、綺麗だね」 『え?』 私の右目は蒼い。 それは生まれながらのものではなく、ギリアの一員であるという証だ。 「それじゃあ僕はもう行くよ。またね、死神の目の持ち主さん」 最後に放たれた言葉は私を混乱させた。 ギリアのメンバー全員が付けているこのコンタクトレンズは、ただのお洒落ではない。 敵を認識するためのもの。 それゆえに死神の目と呼ばれている。 最も、一護だけは例外なのだが。 『ちょっと待って石田くん!』 呼びとめる私の声は彼には届かず、人ごみの中に彼の姿は消えていった。 ← back |