『総隊長、お久しぶりです。この度はどうぞよろしくお願いします』
「話は聞いておる。五番隊はお主の古巣じゃ、存分に学んでいくがよい」



この件は総隊長にでさえ内密にしてある。
最早誰が敵かわからないこの状況では、こうせざるを得なかった。
内心申し訳なく思いながらも、私は久しぶりの五番隊へと向かった。



「ゆり君、久しぶりだね」
『お久しぶりです、どうぞよろしくお願いします』



迎えてくれた藍染隊長は昔と変わらずに優しい微笑みを浮かべていた。
けれども今はそんな表情でさえも偽りのものであるかのように見える。
全てを知ってしまった今、私はあの頃のように純粋に彼を尊敬することはできない。



「僕の補佐とは言っても、とくにやってもらうことはないんだけどね」
『隊長の仕事を拝見させていただけるだけで構いませんよ。見て学ぶのも大事ですから』



私はちゃんと笑えているだろうか。
藍染隊長には全てを知られているような気がしてならない。



「そうか、今から三番隊に行くけれどついて来るかい?」
『はい、お供します』



本音を言えば行きたくなかった。
三番隊に行けば間違いなくギンがいる。
私が何も知らなかったなら、本当に研修で護廷に来ているのであれば彼に会うのは嬉しいことなのだけど、今の私にはギンに昔のように笑いかける自信がない。
藍染隊長の後ろで必死に笑顔の練習をしているうちに目的の場所へと着いてしまった。



「藍染だ、入るよ」
「どうぞー」



懐かしい声も今は耳にしたくない。
隊首室の中に入れば、昔と変わらない姿のギンが居た。



「ゆり!?こっち戻って来てん?」
『ギン……久しぶり』
「こっち戻ってきたらすぐにボクんとこ来る言うてたやないの、なして?なして藍染隊長と居んの?」



私の姿を見るなり立ちあがって目の前にやってきた彼は、これでもかと言わんばかりに私の肩を揺さぶった。
漸く落ち着いた頃には吉良君が私達の分のお茶を用意していた。



「霜月さん、お久しぶりです」
『久しぶり、吉良君。ギンはちゃんと仕事してる?』
「当たり前やないの、イヅルには迷惑かけてへん」
「何を言っているんだい?吉良君はいつもギンを探している気がするんだけどね」



昔と変わらないやりとり。
懐かしいはずなのに、どこか虚しさを感じた。
きっと、変わってしまったのは私なんだ。



「ゆりは元気しとった?」
『うん、元気だよ』
「ゆり君はね、研修のために護廷に来ているんだ。しばらく僕についてもらうことになっているよ」
「そんならボクんとこ来ればええのに」
「市丸隊長だと手本になりませんよ」



吉良君に諌められて口を尖らせる姿も、それを見て笑う藍染隊長の姿も昔と変わらない。
本当にこの人達が護廷を裏切ろうとしているのだろうか。
上司から聞いた話が全て嘘であればいいと切に願った。


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