『浦原隊長、それは本当なんですか……?』
「残念ですが本当です。あの日、平子サン達を虚化させたのは間違いなく藍染です」



信じられなかった。
信じたくなかった。
真兄がいなくなってからも私に優しく微笑みかけてくれたあの笑顔は偽りだったというのか。
私が零番隊に行くと言った時のあの言葉は偽物だったのか。
今までの思い出は全部作り物だったのか。
私はずっと彼らに騙されていたんだ。



「ゆりサン」
『浦原隊長、教えていただいてありがとうございます』
「ゆりサン!」
『尸魂界へ戻ります。全てを公表して彼らに罪を償ってもらいます』
「アナタ一人で何ができるっていうんですか?」



立ちあがった私の腕を浦原隊長は掴んだ。
折れてしまいそうなほどにきつく握られた手は少し震えていた。



「少し、少しだけ時間を下さい。黒崎サンは朽木サンを助けに行くと言うはずです。もちろん、アナタの力を信用していないわけではありません。それでも、一人で護廷を敵に回すのは危険すぎます」
『放して下さい、私は行かなきゃいけないんです。真兄達を奪った犯人が分かったんですよ?じっとなんてしていられない……』
「誰が奪われた、やて?」



背後から聞こえた懐かしい声に振り向くと、そこには苦笑いを浮かべる真兄の姿があった。
服装も変わって、長かった髪も短くなっているけれど、昔と変わらないままの姿でそこに立っていた。



「何や、無言か?感動の再会やねんから、もっとこう熱い抱擁とかないんか?」
『真兄、なの……』
「他に誰が居るんやっちゅうねん。俺や、平子真子や」



頭をくしゃりと撫でられた。
百年ぶりの感覚に懐かしさを覚えると同時に安堵した。
真兄は生きている。
また、会えたんだ。



「いきなし居らんようになってすまんかったな。寂しかったやろ?」
『馬鹿!真兄の馬鹿!どんだけ心配したと思ってんのよ!』
「俺が悪かったって。しゃあから泣くのはやめや、喜助が困っとるやろうが」



優しい声音も温かい感触も、全部間違いなく真兄のものだった。
そのまま私達は浦原商店のさらに奥に通されて、向かい合って座った。
話したいことなんて山のようにあるけど、今はまずやらないといけないことがある。



「ゆり、ほんまに尸魂界に行く気なんか?」
『うん、上官にも護廷の敵に回るかもしれないって言われてたし』
「しゃあけどお前一人で行かせるんはなあ……」
『仕方ないじゃない、うちの隊は他にも仕事があるんだし』



本来ならば他にも隊の者を連れてきてもおかしくないほどの事態だ。
しかし、零番隊の本来の役目は王族の守護。
あまり人員は割けないのだ。



『とりあえず、報告してどうするか決める』
「わかった。もし行くことになったらすぐに連絡せえ」
『うん』



真兄が現れたことで幾分冷静さを取り戻した私は、短い再会の後で浦原商店を後にした。


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