それからの私は零番隊の一員として必死に働いた。
他の皆に遅れないように今まで以上に鍛練にも励んだおかげで、今や護廷の隊長に匹敵するくらいの力を付けたと思う。
そして、あれから一度も瀞霊廷には行っていない。
忙しいということもあったし、何より自由が制限されていた。



「霜月、お前には明日から現世に行ってもらう」
『現世、ですか?』
「ああ、護廷の死神が一名行方不明になっているのだが、どうもその居場所が未だに掴めていないらしい」
『わかりました。で、捜索対象は?』
「十三番隊朽木ルキアだ」
『朽木、ルキア……』



久方ぶりに耳にした名前に胸が痛くなる。
恐らく間違いない、朽木君の、緋真さんの妹のルキアちゃんだ。
私の様子を目にした上司が怪訝そうな顔をする。



「どうした?嫌なら他の者に行かせるが」
『いえ、私に行かせてください!』
「そうか。いいか、このことは護廷には知られぬように。少し気がかりなことがある」
『わかりました』



それからすぐ、私は現世の空座町へと向かった。
ルキアちゃんは此処の駐在任務に就いていたらしい。
目を閉じて霊圧を感知しようとするも、彼女らしき霊圧は補足できなかった。
その代わりにいくつかの強い霊圧とどこか懐かしいような霊圧を感じた。



『気のせい、だよね』



用意された部屋に荷物を運び入れると、町の中を散策しようと思い再び外に出た。
屋根伝いに町をぐるりと一周するも、やはり目的の人物は見当たらなかった。
それなのに何だろう、妙な胸騒ぎがする。
その時、胸元に入れてある伝令神機が機械音で虚の出現を知らせた。
虚の居場所を確認すると、急いでその方向へと向かう。



『何だ……あの死神は……』



伝令神機の示した場所に辿り着いた時、すでに虚の姿はなく、代わりに身の丈ほどの大きな斬魄刀を持った死神がいた。
鮮やかな燈色の髪の毛。
大きな霊圧を発してはいるが、それはどこか不安定だ。
現在の護廷の隊長格、席官までは資料で目にしたことがあるが、あんな死神は見たことがない。



『一体何が……』



急いでその死神に近寄ろうとすると、さらに小さな霊圧ともう一つ懐かしい霊圧を感じた。
自身の霊圧をし仕舞い込んで物陰に隠れて様子を伺う。
そこに現れたのは間違いなく朽木ルキアと、そして百年ほど前に真兄とともに姿を消した元十二番隊隊長だった。



『浦原、隊長』



彼が現世に居ることは知っていた。
そして、現世で死神相手の商売をやっていることも。
でも、まさか彼が朽木ルキアに関わっているとは思わなかった。
義骸に入っている朽木ルキア、彼女の霊圧は以前よりもかなり弱弱しくなっている。
一体何がどうなっているというのか。
ひとまず隊に連絡しようと私はその場を離れた。



「おや、懐かしい人がいますね」
「どうした、浦原?」
「いや、なんでもないっスよ」



とうとうあの人達が動き出しましたか、と小さく呟かれた浦原隊長の言葉を私が耳にすることはなかった。


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