副隊長という仕事にも漸く慣れてきた頃、私は久しぶりに古巣である五番隊へと訪れた。
書類を届けに行くついでにと藍染隊長に手土産を持って懐かしい隊首室へ入ると、意外な人物が迎えてくれた。



「霜月副隊長、お久しぶりです!」
『えっと……雛森さん?』
「はい!」



あの時、ギンと霊術院に講師として赴いた時に会った少女は五番隊に入隊していた。
しかも、上位席官。
副官のいない藍染隊長の世話は彼女がしているのだという。



『元気だった?他の二人は?』
「はい、二人とも五番隊だったんですけど、吉良君は四番隊に、阿散井君は十一番隊に異動になりました」
「久しぶりだね、ゆり君」



雛森さんと話をしていると、藍染隊長が戻って来た。
持ってきた書類と手土産の茶菓子を渡すと、雛森さんがお茶を淹れてくれると言ったのでその言葉に甘えることにした。



『ご無沙汰しています』
「そんなに畏まらなくてもいいよ。君の話はギンからよく聞いているからね」
『そうですか』
「そういえば雛森君とは顔見知りだったね。彼女はとても優秀でね、近々副官にしようと思っているんだ」



まだ内緒だ、とそっと小声で教えてくれた。
雛森さんの後ろ姿を見ながら、きっといい副官になるだろうと期待した。



「ゆり、どこ行ってたん?」
『藍染隊長のところ。久しぶりにゆっくり話がしたくなって』
「あの人のところに一人で行ったらあかんていつも言うてるやろ?」
『別にいいじゃない、元上司なんだし』
「せやけどなあ……」



ギンの表情がわずかに曇った。
以前からギンは私と藍染隊長が接触するのをやけに嫌がっていた。
理由を聞いても、あの人は胡散臭いなどとわけのわからないことばかり言うのでこうして時々ギンに黙って会いに行く。
どうしてギンがここまで固執するのか、この時の私はまだその理由を知らなかった。
そしてそれからすぐに雛森さん改め桃ちゃんが五番隊の副隊長となった。
そして、乱菊が副隊長を務める十番隊に新しい隊長がやって来た。



「ゆりー、ほらウチの新しい隊長」
「日番谷冬獅郎だ、よろしく頼む」
『えっこの子が隊長?』
「ゆり、それ言うと隊長怒っちゃうから」
『すみません!三番隊副隊長の霜月ゆりです』
「ああ、松本から話は聞いてる」



また少し、護廷が変わった。
その中に私が含まれるのはそれからすぐのことだった。


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