「ゆり!」



非番の日、部屋で寝ているとけたたましい音を立てて扉が開かれた。
玄関から聞こえるのはギンの声。
眠たい目を擦りながら向かうと、姿を見るなり抱きつかれた。



『ちょっと何すんの、ギン!』
「ボク隊長になるんや!」
『隊長!?』



ギンを引き剥がして話を聞けば、先日隊首試験が行われて晴れて合格したので隊長になることに決まったらしい。
そんな話聞いていなかったんだけど。



「受かったらびっくりさせてやろう思うとったんや。びっくりしたやろ?」
『当たり前じゃない、いきなり隊長だなんて』
「せやろ?でな、もう一個あんねん。さっさと死霸装に着替えてや」
『は?私今日非番なんだけど』
「ええから、早く」



訳がわからないままギンに急かされて死霸装へと着替えた。
せっかくの非番なのに何でこんなことになったんだろう。



『で、どこに行くの?』
「藍染隊長のとこに決まっとるやろ。隊長は明日でええて言うとったけど、こういうんは早いほうがええんや」



いつもより早足で歩くギンについて五番隊へ向かうと、非番のはずの私が死霸装を来ているのを見て藍染隊長が溜息を吐いた。



「ギン、ゆり君は今日休みなのに……」
「ええんです、ほら」
『ったく何なのよ』
「しかたないか。ゆり君、君を三番隊の副隊長に推薦しておいたよ。恐らくギンの隊長就任とともに君にも辞令が下ると思う」
『え?』



何で私が?
副隊長?
何かの間違いなんじゃないかとは思ったけれど、藍染隊長が言ってるんだから間違いではないだろう。
混乱した頭のまま、とりあえず隊長にお礼を言った。



『あ、ありがとうございます』
「良かったな、ゆり!しかもボクの隊やで?楽しみやわあ」
「君が居なくなるのは少し困るんだけどね。でも、ギンを放っておくと何をするかわからないから」
『いえ、そんな……』



どうやら、副隊長になっても私の仕事は相変わらずギンのお目付け役らしい。
喜んでいるギンを見て苦笑いする藍染隊長も、よほどギンに手を焼いていたんだと思う。



『藍染隊長、長い間お疲れ様でした』
「ありがとう、君は今からもっと大変になるだろうね」
『そうですね……』



それから一月後、ギンの隊長就任とともに私は三番隊の副隊長となった。
そして、時を同じくして朽木君も六番隊の隊長となったのだ。
また一つ、護廷が変わった。


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