三席となってからも、私は相変わらずギンの見張り兼補佐として仕事をしていた。
藍染隊長の人柄のおかげか、五番隊にはいつも穏やかな空気が流れていて、ゆっくりと平和な日々を過ごしていたある日の出来事。



『隊長、緊急です。現世実習に出ている霊術院の学生より救援要請がありました』
「不測の事態でも起きたのかな?ギン、すぐに向かうよ」
「はい」
「すぐに戻ってくるから、その間のことは君に頼んだよ」
『わかりました』



白い羽織を翻して、藍染隊長とギンは現世へと向かった。
その後ろ姿を見ながら、ギンも随分と変わったなと思う。
昔は私とそう変わらなかった背丈も随分と伸びて、今では頭一つ以上も大きい。
細かった身体も少し筋肉が付いて、今では立派な青年だ。
今の彼なら副隊長として隊長の背中を護ることだって簡単にできてしまうんだと思う。
なんだか私の手の届かないところに行ってしまうような気がして、少し寂しくなった。



「霜月三席、この書類を……」
『あ、ごめん。これは隊長印がいるからこっちを十番隊に持っていって』
「わかりました」



私は成長できているんだろうか。
もちろん背は伸びたし、力も少しはついていると思う。
それでもやっぱり乱菊やギンみたいに強くはなくて、置いてきぼりにされたような気分だ。



「……ゆり」
『はい!』



振り向くと怪訝な顔をした朽木君がいた。



「考え事か?」
『いや、別に。隊長達なら今居ないよ』
「構わぬ。今日はゆりに伝えておきたいことがあって来た」



改まって何の用だろうと思えば、伏し目がちの朽木君がゆっくりと口を開いた。
緋真さんが亡くなった、と。



「ゆりにも世話になっていたからな。緋真もお前に感謝していた、友人ができて嬉しかったと」
『そっか……朽木君大丈夫?』
「緋真は元々病弱であった故、覚悟はしていた。それに、私には緋真との約束を果たす義務がある」
『約束?』
「ゆりも聞いたことがあるだろう、緋真の妹のことだ」



初めて緋真さんに会って以来、私達は度々会って話をしていた。
彼女が時々話をしてくれたのは、流魂街に捨ててきてしまったという妹のこと。
床に伏せるまでは、よく流魂街に探しに行っていた。



『探す方法は考えてるの?』
「手掛かりは流魂街にいるということしかない」
『妹さんって、緋真さんに似てるのかな?』
「わからぬ」



手掛かりなんてないに等しいのに、見つけられるんだろうか。
それでも、朽木君なら何としてでも見つけると思う。
他でもない、緋真さんの願いだから。



『私もそれらしき人がいないか探してみるよ』
「ああ、頼む」
『それから……緋真さんによろしく』
「ああ」



朽木君はわずかに微笑んだ。
それでもすぐにいつもの表情に戻って、隊へと戻って行った。
それと入れ違いに帰ってきたのは隊長とギン。


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