とある日、私は書類を届けに十二番隊へと向かっていた。
本来ならばギンが届けるべきものなんだけれど、どうやらギンは十二番隊が苦手らしく代わりに私が行くことになった。



『失礼します、五番隊の霜月です』
「どうぞー」



気の抜けたような返事がして、突然隊首室の扉が開いた。
と同時に出てきたのは私とあまり背丈の変わらない副隊長。
金髪の副隊長は、風のように私の隣をすり抜けていった。



「びっくりさせちゃってすみませんねえ、あ、初めましてですね」



へらりと笑った白い羽織を纏ったその人は、先日隊長に就任したばかりだったはず。
猿柿副隊長とはどうやら合わないらしいと平子隊長がぼやいていた。



『いえ、五番隊の霜月です。書類を持ってきました』
「もしかして……平子サンのところに住んでるっていう」
『……たぶん私のことかと』



平子隊長はどうやらいろんな人に言って回っているようだ。
目の前の浦原隊長は、人の良さそうな笑みを浮かべたままで書類を手に取った。



「話は聞いていますよ。平子サンも随分と可愛がっているご様子で」
『いえ、そんなことは……』
「そうや。しゃあからコイツに手出したら許さへんで喜助」



聞き慣れた関西弁が聞こえたと思ったら、浦原隊長と私の間に平子隊長が立っていた。
何でここにいるんだろう。
十二番隊に来る用事があったなら、代わりに書類を持っていってくれればよかったのにと心の中で思う。



「まさか、そんな怖いこと僕がするはずないじゃありませんか」
「お前やから忠告しとるんじゃ、ボケ」



やいやいと言いあっている二人の間に、ひゅんと金髪が舞った。
軽快な音と共に、見事に平子隊長は倒れた。



「そうかそうか、コイツが真子と暮らしとる女か」
「女やのうて妹や、妹!」



慌てて訂正する隊長に見向きもせずに、飛び込んできた猿柿副隊長は私の顔をじっと見た。
なんだか居心地が悪くなって、肩をすくめた。



『あ、あの……霜月ゆりです。よろしくお願いします猿柿副隊長』
「ゆり!副隊長やら呼ばんでええねん、コイツなんか猿で十分や」
「猿ってなんやねん!ゆり、ひよ里って呼びいや」



見た目に反して良い人なのかもしれない。
平子隊長と同じようににかっと笑って、猿柿副隊長改めひよ里さんは手を出した。


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