霞む視界に映るのは乱菊の顔。 ボクの頬が濡れとるのは、きっと乱菊の涙や。 「ギン、なんでアンタまで……」 ゆりんこと言うてんのやろうな。 やっぱりあの時謝っといてよかった。 なんや、もう喋ることもできへんわ。 ―ごめんな、乱菊。さいなら。 本当は、あの時ゆり殺したんはボクやって言おうと思った。 そしたら乱菊はボクんこと心から憎むやろ? ボクが居らんようになったかて、泣くこともなかったんや。 それでも言えへんかったのはボクの弱さ。 ごめんな。 たった一言に全てを込めた。 ゆりだけやなくてボクまで乱菊の前から消えてしまうこと。 結局ボクは乱菊の取られたもんを取り返せんかったこと。 そして、ゆりに言われたのに乱菊を泣かせてしまったこと。 ボクな、乱菊のことほんまの家族みたいに思うててん。 せやからどうしても許せへんかった。 乱菊の大切なもん奪ったあの人が。 そんなボクの勝手な思いの所為で乱菊も、そしてゆりのことも傷つけた。 ボクは結局何をしてきたんやろな。 最後に一つだけ、もし願いが叶うんなら、乱菊には笑っていてほしい。 それがゆりの願いなんや。 ボクの願いなんかゆりにくれてやる。 ゆりの願いがボクの願いや。 ほな、ボクはもう逝くわ。 一足先に、ゆりに逢いに。 もしまた 会えたら、そん時はまた三人で……。 END ← back |