翌日、朝早くから瀞霊廷内をうろついていると、誰かが斬魄刀を解放した気配がした。
その場所へと向かった私が目にしたのは、壁に張り付けられた藍染隊長。
吉良君と雛森さんの間に割って入る日番谷君。
そして、雛森さんの視線の先で笑みを浮かべているギンだった。



『これは何?』
「見ての通り、藍染が死んだ」
『で、雛森さんがギンに斬りかかったのを吉良君が止めたってわけ?』
「ああ」



苦い顔をする日番谷君は、総隊長に報告すると言ってその場を去った。
藍染隊長は状況から見て誰かに殺されている。
しかし、彼が殺されるなんてありえない。
彼はそうやすやすと殺されるような人ではないし、何より彼を殺せるほどの力を持った人なんてこの瀞霊廷にそう多くはない。

四番隊がやって来て彼の遺体を運んでいる。
その近くに寄ってみるが、やはり藍染隊長だ。



『ねえ、ちょっと調べてみてもいい?』
「すぐに卯ノ花隊長に見てもらうので、少しなら」



隊士に断りを入れて彼に触れる。
確実に藍染隊長なのだけれど、どこか違和感がある。
それにあのギンの笑み。
いくらギンとて、昔の上司の遺体を目にして平然と笑っていられるものだろうか。



『ありがとう。卯ノ花隊長に念入りに調べるように言っておいてもらえる?』
「わかりました」



四番隊が彼を連れて行ったその時、遠くで大きな霊圧を感じた。
間違いない、これは黒崎のものだ。
しかし相手が悪すぎる。



『よりによって剣八と……』



私は手出しをするわけにはいかない。
いざとなったら夜一さんが居る、今は自分のすべきことをするべきだ。
後ろ髪を引かれる思いで私が向かったのは、現世。
彼のことはあの人に聞くのが一番だと思ったから。



『浦原隊長、真兄を呼んでもらえますか?』
「どうしたんっスか?もうあっちの騒動は……」



突然戻って来た私に驚く浦原隊長に、私は首を横に振った。
藍染隊長が何者かに殺されたことを伝えると、浦原隊長はすぐに真兄に連絡をした。



「ゆり、惣右介が殺されたってどういうことやねん!?」
『今朝、遺体が発見されたの。見た目は藍染隊長に間違いなかった』



私の答えに少し考えるような素振りをした真兄はゆっくりと顔を上げて口の端を上げた。
どうやら、私が此処に来たことは間違いではなかったようだ。



「惣右介の斬魄刀の能力は完全催眠や。五感全てを支配できるけったいな能力や」
『じゃあ、あれは幻覚……』
「その可能性もないとは言い切れんな。俺も惣右介がそう易々と殺されるわけない思うてんねん」
『ありがと、もうちょっと調べてみるよ』
「気い付けな」



現世を経った時、もう会えないかもしれないと覚悟を決めたはずだったのに、こうして会うとその覚悟が揺らいだ。
それでも、雑念を振り払うかのように斬魄刀を握りしめ、穿界門を開いた。


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