それから数日後のことだった。
尸魂界に旅禍が侵入したという情報が届いたのは。



「どうやら瀞霊廷の外に落ちたみたいだね」
『白道門のほうですね』



霊圧を探ってみれば、確かに黒崎の霊圧を感じた。
それと同時に、近くにギンの霊圧を感じた。
今、彼がギンと対峙すれば間違いなく負ける。
ギンは強い。
しかも、この事件の首謀者の一人なのだ。



「どうかしたのかい?」
『いいえ、白道門の近くにギンの霊圧を感じたので』
「そうか、それなら安心だろう」



今ここで私が彼らの元に行けば、確実に藍染隊長に怪しまれる。
逸る気持ちをぐっと堪えて、今はただ彼の無事を祈った。
その翌日、緊急招集だと言われて一番隊へ行けば、昨日旅禍である黒崎と対峙したギンの処遇が問われた。
自分のミスだと言ってのけたギンの言葉がどうしても信じられなかった。
彼ほどの力があれば、黒崎を一撃で捉えることなど造作もないはず。
何のために黒崎を生かしたのかと考えていると、警報が鳴り響いた。



「随分と都合よく警鐘が鳴るものだね」
「言うてはる意味がわかりませんなあ」



藍染隊長とギンの会話。
それを聞いていたのは、私と十番隊の隊長だけだった。



『日番谷君、どうした?』
「なんでもねえ」



日番谷君はきっとギンのことを疑っている。
これは恐らく藍染隊長とギンの茶番だ。
だとすれば、日番谷君は故意にこの会話を聞かされているのだろう。



「全く、ギンもこんな時くらいきちんと仕事をしてほしいものだね」
『そうですね。旅禍を取り逃がすなんて彼らしくないと思います』



ギンも日番谷君も去った後、藍染隊長は苦笑いをしながら私に言った。
私はどうするべきなのか。
黒崎は本当にルキアちゃんを助けることができるのか。
私にできることなんてあるのだろうか。



「どうしたんだい?」
『いえ、なんでもないです』
「君もこんな時に研修だなんて運が悪いね」
『そうですね』



こんな時だからこそ、なのだが。
藍染隊長に心の内を悟られないように、必死に作り笑いをした。


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