そして夜、私は浦原隊長の言葉を無視して外に出た。
私はあの頃のような子供じゃない。
席官でもない入隊したての死神でも真兄やギンに頼りっぱなしの子供でもなくて、零番隊の死神なんだ。
外に出て一番わかりやすそうなあの名も知らない死神の霊圧を探ろうとすると、よく知った懐かしい霊圧を感じた。



『朽木君?』



上司に言われた言葉が脳裏をよぎる。
今ここで気付かれるわけにはいかない。
霊圧を最小限に抑えて朽木君の霊圧を感じる方向へと向かった。
そしてその場に近づくほどに感じるのはあの死神の霊圧。
今にも爆発しそうなほどに膨れ上がった霊圧は、とてもじゃないけど平隊士のものとは思えない。



『ルキア、ちゃん……?』



私がその場に辿り着いた時には、ルキアちゃんが目に涙を浮かべてあの死神を見ていた。
もしかするとあの死神は人間なのだろうか。
そうだとすれば、ルキアちゃんのあの悲しそうな表情も、朽木君が有無を言わさず連れて行こうとするのにも納得がいく。
彼女は人間への霊力譲渡という大罪を犯したのだ。
朽木君とその部下――恐らく霊術院で目にした阿散井君――が穿界門の中に消えた後、私は残されたあの死神に近寄った。



『生きてる?』
「ゆりサン、黒崎サンのことはアタシに任せて下さい」



地面に伏せているその死神もどきに声をかけると、背後から声が帰って来た。
浦原隊長だ。
どうやらこの死神もどきは黒崎という名らしい。



『浦原隊長、この者は人間ですよね?』
「はい、黒崎サンは人間です。とある事情により朽木サンから死神の力を得はしましたが」
『そうですか。詳しく話を聞かせてもらえませんか?』
「いいっスよ。ついてきて下さい」



浦原隊長について行くと、浦原商店と書かれた店の中に案内された。
どうやら此処が現世での浦原隊長の住処らしい。
先ほどの黒崎という死神もどきを寝かせると、浦原隊長は話をしてくれた。
この黒崎一護という人間はもとより霊力が高く、その家族が襲われた時にやむなくルキアちゃんがこの者に霊力を譲渡した、と。
そして、それに気付いた尸魂界が先ほどの朽木君達に彼女の捕縛を命じたと。



『そのような理由があれば、刑は減免されるでしょうね』
「いや、どうでしょうかねえ……」
『人間を護るもの死神の仕事ですし』
「確かにそうっス。でも、彼女の中にはあるモノが入っているんです」



そして浦原隊長が話してくれたのは、全てのこと。
百年前のあの事件から始まった、忌々しい過去と現在を繋ぐ話だった。
あの藍染隊長が、東仙隊長が、そしてギンがこの件に関わっている可能性があることを。


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