「そうか、やはり朽木は現世に留まっていたか」
『はい、先代の十二番隊隊長と共にいました』
「わかった。それにしてもその馬鹿デカい斬魄刀を持った死神ってのは聞いたことがないな」
『霊圧は恐らく上位席官に匹敵するほどです。しかし、非常に不安定なものでした』
「とりあえず、奴等に気づかれないように監視を続けてくれ」



そして、私は一つ気になったことを上司に告げた。
上司はそうかと一言言うと、しばらくの沈黙の後に私の予想をはるかに超えた事実を口にした。



「今回の件では、恐らくお前に護廷の敵に回ってもらうことになる。直に護廷も朽木ルキアの居場所に気づくだろうが、お前は絶対に気づかれるな」
『わかりました』



護廷の敵。
その言葉は私の心に重くのしかかった。
それはつまり、朽木君のことも藍染隊長のことも乱菊のこともそしてギンをも敵に回すということ。
今まで離れていたからあまり気にかけなかったけれど、既に私は護廷十三隊の者ではないということを改めて思い知らされた。



『学校ねえ……』



次の日の昼間、昨日見かけた死神の霊圧を辿れば学校らしきところに辿り着いた。
教室の中を覗き込むと、昨日の死神とルキアちゃんが話しているのが見えた。



『すっかり人間じゃない』



ルキアちゃんの姿は霊圧が弱くなっていることもあってか人間そのもので、現世によく馴染んでいた。
そして、その教室の中には昨日の死神の他にもいくつかの強い霊圧を持った人間がいた。




「ゆりサン、でしょう?」



いきなり背後から声を掛けられて振り向けば、百年ぶりの姿があった。
浦原喜助。
先代の十二番隊隊長で、真兄達と共に瀞霊廷から姿を消した死神だ。



『お、お久しぶりです浦原隊長』
「アタシはもう隊長じゃないっスよ」
『そうでしたね』



昨日上司に気づかれるなと言われたばかりなのに、と肩を落としていると、浦原隊長は私の手を引いて人気のない場所へと向かった。
義骸に入ってなかったのが幸いだろうか。
浦原隊長の格好は現世でも珍しいらしく、学生と思しき人間達が私達を振り返る。



「ゆりサン零番隊に昇進したらしいっスね。おめでとうございます」
『ありがとうございます』
「で、単刀直入に聞きますけど、現世に来たのは朽木サンの捜索のためっスね?」



答えられなかった。
基本的に私達の任務は極秘で行われる。
いくら護廷の者ではないといえ、任務の内容を話すわけにはいかない。



「答えられないっスよね。すみません。じゃあ一つだけ忠告しておきます、今日の夜は絶対に外に出ないで下さい」
『何で……』



私が言葉を紡ぐ前に、浦原隊長は姿を消した。
霊圧を消しているのか、全く補足できない。
一つ確かなのは、今日何かが起こるということだけだった。


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