「キミ、何ていうん?ボクは市丸ギンや、よろしゅうな」



にっこりと笑って差し出された手。
私はその手をとった。



『私は霜月ゆり、よろしくね』



霊術院に入って仲良くなった友人の幼馴染であるこの男を紹介されたのは、つい先日のこと。
私達よりも少し早く死神になったというその男は、会ってみればあの有名な天才児だった。



「ギン、ゆりは春から五番隊所属だからいろいろ教えてあげてね」
「そうなんや。楽しみやなぁ」



そう、この春から晴れて私は死神となる。
面倒なしがらみからやっと解放されるのだ。



『そっか、上司になるんだ。じゃあ、よろしくお願いします、市丸三席』
「三席なんて呼ばんでええよ。ギンでええ」
『じゃあ、あらためましてよろしくね、ギン』
「こちらこそよろしゅうな、ゆり」



これが全ての始まりだった。

そして春、私は死神になり希望通りに五番隊へと配属になった。



「やあ、君がギンの言っていた子か。これからよろしく頼むよ」
『霜月ゆりです。よろしくお願いします、藍染副隊長』



にこやかな笑顔で挨拶をしてくれたのは五番隊副隊長藍染惣右介。
そして、その様子を見ていた人物が突然私に顔を近づけた。



「お前が市丸の言うとったゆりか。俺が隊長の平子……って知っとるか」
『はい。お久しぶりです、平子隊長』



深々と頭を下げれば、平子隊長に頭を殴られた。
仮にも女なのに、いきなり殴ることはないんじゃないかと。



「何がお久しぶりですや!お前俺がどんだけ心配したと思うてんねん!突然脱走しよってからにこの阿呆!」
「隊長は霜月君とお知り合いなのですか?」



一気に捲し立てる隊長を見て、藍染副隊長は驚いたような顔をしていた。
ここまで隊長が怒るのは、私に原因があるのだけれども。



「知り合いなんてもんやないわボケ!コイツは……そうやな、俺の妹みたいなもんや」
「妹?隊長に兄妹がいるという話は耳にしたことはありませんが」
「せやからみたいなもん言うとるやろうが。あーあれや、俺の知り合いの娘や。コイツがこんなにちっこい時から知っとる」
『全く、相変わらず騒がしいんですね隊長は』



溜息を吐いて隊長を見れば、今にも掴みかかりそうな勢いで睨みつけられた。
藍染副隊長が隊長を止めてくれなかったらどうなっていたことか。


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