『お疲れ様です、どうでしたか?』
「残念ながら六回生が二人、命を落としたよ」
『そうですか……』



六回生ならもうすぐ卒業、しかも現世実習の引率に行くくらいだから実力もあったのだろう。
亡くなった子達のことを思っているのか、藍染隊長は悲しそうな顔をしていた。



「だが檜佐木君だったかな、彼はやはり噂通りの人物だったよ。五番隊に入れればよかったかな」
「そうですねえ。でも、あの一回生の三人もなかなかやと思いますよ」
「吉良君と阿散井君と雛森君だろう?彼らが死神になった時が楽しみだよ」
『一回生ですか?』



今回実習をしていた一回生なのだろう、隊長やギンが褒めるくらいだからよほど見込みがあるんだろうな。
もしかしたら抜かされちゃうかもな、なんて考えていると、藍染隊長が何かを思いついたように口を開いた。



「気になるのなら一度見てみるといいよ。幸い今度霊術院の講師の話が来ているからね」
『私がですか?』
「人に教えるというのも大事なことだ。行ってみるといい」
「ゆりが行くんならボクも行きますよ」



こうして数日後、私はギンとともに霊術院の非常勤講師として教鞭をとることになった。
当日、普段は付けていない副官章を付けたギンと霊術院へと向かう。
此処に来るのは卒業して以来だ。



「なんや、緊張しとるん?」
『そりゃあ緊張するよ。講師なんて初めてだし』
「講師いうても別に隊士に稽古つけるんと変わらへんよ」



そうは言ってもやっぱり緊張する。
ただ教えるだけじゃなくて、実際に私達が戦って見せろと藍染隊長に言われてるんだから。
ギンと手合わせなんて、負けるに決まってるし。



「ボクは手加減せえへんからな」
『わかってるよ、副隊長が負けたらかっこ悪いもんね』



久しぶりに足を踏み入れた霊術院は昔と何も変わっていなかった。
稽古場へ向かうと、多くの学生が整列して静かに待っていた。



「どうも、今日講師を務める五番隊副隊長の市丸ギンいいます。で、こっちは三席の霜月ゆり。よろしゅう」
『よろしくお願いします』



学生の前に立って挨拶をすると、一斉に私達に視線が集まる。
私達とは言っても、主にギンに向けてなんだけど。



「ほな、とりあえずいつも通り稽古やってや」



ギンの相図で学生達は散らばって稽古を始めた。
私達は見廻りながら改善点などを指摘していく。
その中でも一際目立っている学生が居た。



『君達、なかなかやるね』
「あ、ありがとうございます!」



頭を下げたのは紅い髪と金髪の男の子。
初々しいなあと思っていると、頭に手を乗せられる感触がした。



「ゆり、この子らや」
『実習の時の?』
「せや。あとはあっちの女の子」



ギンが指さした先には小柄な女の子。
彼が手招きすると、その子もこちらへ走って来た。



「お、覚えてて下さったんですか!」
「勇気のある子らやなあ思うてな」
「ありがとうございます!」



嬉しそうに話している男の子は吉良君というらしい。
あとは阿散井君と雛森さん。
常勤の講師に聞けば、この三人は霊術院の中でもトップクラスの成績だそう。
その後、私とギンが簡単に手合わせするのを見せて、授業は終わった。
言わずもがな、ギンには敵わなかったんだけど。


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