十二番隊を出て五番隊へと戻ろうとすると、後ろから平子隊長の声がした。 「ゆり、隊に戻るんやろ?」 『はい、市丸三席の見張りをしないといけませんから』 そんなら俺も一緒にと言って、隊長は私の横に並んで歩きだした。 本当に、この人は何で十二番隊に行ったのだろうか。 『隊長、十二番隊に何か用があったのでは?』 「用ならもう終わっとるわ。ゆりの様子を見に来ただけやからな」 『は?』 「当たり前やろうが。お前を喜助に一人で会わすなんて危険すぎるわ!それにあそこにはひよ里も居るんやで?あることないこと吹き込むに決まっとる!」 何かやましいことがあるんじゃないかと思うほどに、隊長は一気に捲し立てた。 それでも、私の為に此処に来てくれたのかと思うと少しだけ嬉しくなった。 ふと横に並ぶ隊長の顔を見ると、目が合った。 どうしていいのかわからなくなって、顔を背けた。 「何や、何か付いとるか?」 『……目と鼻と口が』 「当たり前やないか!」 そう言ってケラケラと笑う隊長の隣はなんだか居心地が良くて、私もつられて笑顔になった。 風が吹く度に隊長の長い髪がサラサラと揺れて私に触れる。 くすぐったいような変な感じがした。 『真兄、ありがと』 「何や、今更」 ありがとうなんて陳腐な言葉で言い表せないほどに、隊長には感謝している。 私に家族をくれたこと、居場所をくれたこと。 全部全部、真兄のおかげなんだ。 「ゆり!」 そして、目の前から私を呼ぶ声と共にギンが走って来た。 かなり急いでいたようで息が上がっている。 『ギン、どうしたの?』 「どうしたもこうしたもないわ。中々戻って来おへんから心配して見に来たんや」 十二番隊に行かせたのは自分なのに、心配だなんて。 笑えるけれど、ギンらしいと思った。 「で、なして隊長が居るんですか?」 「俺が居ったらあかん言うんか?お前こそゆりを一人で十二番隊に行かせるやなんて、何かあったらどうしてくれんねん」 「何かあったら、そん時はボクが責任持ってゆりんこと幸せにしますさかい、保護者はすっこんどいて下さい」 「誰がお前みたいな奴にやるか!阿呆」 前から思っていたのだが、この二人はとても仲が悪い。 傍から見れば同族嫌悪なのだろうけど。 いつもなら藍染副隊長が宥めてくれるけれど、生憎今は居ない。 『二人とも、外で喧嘩するのはやめて下さい。他の隊の隊士に見られてますよ』 気づけば私達の周りの隊士がこちらを見ていた。 隊長と三席が言いあいをしているのだ。 しかも、本当にどうでもいいことで。 「そんなこと関係ないわ!俺はこん餓鬼が気に入らんのや!」 「そないなこと言いましても、ボクを五番隊に入れたんは隊長やないですか。今更何言うてますの」 『隊長!ギン!』 「ほら、娘さんに叱られてますよ、おじさん」 「おじさん言うな、餓鬼が!」 どうにも終息しそうにない二人の言い合いの間に立って、また藍染副隊長の悩みの種が増えそうだと一人溜息を吐いた。 ← back |