>> 1 「松本、最近美空の様子がおかしくないか?」 日番谷部長に呼ばれて、何かと思えば香奈の話だった。 確かに、最近の香奈はおかしい。 仕事はもちろんちゃんとやっているけれど、どこか思いつめているような… 何かあったのかと聞いてみても、何もないと返されるだけ。 「部長も気がつきました?聞いても教えてくれないんですよね〜」 飲みに誘っても断られるし、ほんとおかしな子… 『日番谷部長、一週間お休みを頂きたいのですが』 「休みか?最近忙しかったし、有給もほとんど使ってないからな。ゆっくり休め」 そんな時だった。 香奈が一週間の休暇を申請した。 今思えば、何でもっと早く気づかなかったんだろう。 休暇二日目。 私は部屋の荷物をまとめた。 元々そんなに物を置いていなかったのですぐに終わった。 あの日…女性と一緒に居るギンを見てから、一度もギンと顔を合わせていない。 わざとギンに会わないように帰宅時間を遅らせていたのだけれど。 これで…これでいいんだ。 『ギン…ごめんね』 段ボールの積み上げられた部屋の中で、静かに呟いた。 ギンも住むこのマンションに居るのは辛すぎる。 私はこの部屋を出て行くことにした。 ― 「今日は香奈は居らんの?」 「あの子、今休暇取ってて。最近様子がおかしいのよね〜」 いつものごとくFaustとの打ち合わせ中の乱菊。 目の前にいる真子は何かを考えている。 「なァ乱菊、香奈は市丸サンと居って幸せなんよな?」 「当たり前じゃない、初恋の相手よ。今回の休暇もギンとどっか行ってんじゃないの?」 乱菊が笑いながら言ったその時だった。 二人の目に映ったのは銀髪の男。 今話題に上ったギンだった。 「これは、お二人ともお揃いで」 「ギン!アンタ香奈と旅行にでも行ってたんじゃないの!?」 ギンは首を傾げる。 「旅行?香奈の仕事が忙しくてそんなん行けへんし」 嫌な予感ほど当たるものだ。 prev//next back |