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「香奈、俺たち…別れよう」



半年付き合った彼氏に別れを告げられ、一人夜道を歩く女。
彼女の名は美空香奈。



『またか…』



ぽつりと呟くその声は、夜の闇に消えていく。
“別れたくない”
そんな可愛げのある言葉を言えるはずもなく、黙って頷き部屋を出てきてしまった。
もうこれで何人目だろうか。
彼女の容姿は決して悪いわけではなく、これまでも何人もの男性と付き合ってきた。
しかし、最後には今日のように別れを告げられる。



『男なんて嫌い』



彼女の口癖だ。
特に何があったわけでもないが、彼女は男性をよく思っていない。
ちょっと笑顔を見せればすぐにこちらに気持ちを傾け、ちょっとそっけなくすればすぐに離れていく。



『馬鹿みたい』



彼女の言葉の指すものは、世の男性に対してかはたまた彼女自身に対してか…

翌日、いつものように会社へと向かう。
彼女はいわゆるキャリアウーマン。
会社に着くと、皆が彼女に挨拶をする。



「おはようございます、美空さん」

『おはよう』



特に笑顔を向けるでもなく、いくつもの挨拶に答えていく。
自らの席に着くと、すぐに仕事にとりかかる。



「おはよう、香奈」

『乱菊、今日は早いのね』



彼女の隣の席にすでに座っていた女、松本乱菊は同僚だ。
友人と呼べる存在の少ない香奈にとって、唯一の親友である。



「失礼ね!私だってたまには早く来るわよ!」



金髪の長い髪に同姓から羨まれるような体系、加えて持ち前の姉後肌。
香奈とは正反対とも思えるこの乱菊とは不思議と気が合った。
いや、正反対だからこそ気が合うのかもしれない。



『あ、私彼氏と別れたから』



この親友には一応報告しておこうと思い、香奈は昨日の出来事を話した。



「またぁ!?アンタ本当長続きしないわね〜」



呆れたような表情の乱菊もいつものことだ。



『大きなお世話よ。さ、仕事始めましょ』



こうして、いつものごとくデスクの上のパソコンに向かった。

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