>> 3 「それで、アンタが男嫌いになったのね〜」 香奈の話を聞き終わり、乱菊が納得したような表情を見せる。 『別にそんなんじゃないって。だいたい、小学生だよ?可愛い恋の思い出よ。ね?』 遠い昔の出来事だと自分に言い聞かせながら、香奈はギンを見る。 「思い出、なァ…」 浮かない表情のギンはぽつりと呟いた。 すると、乱菊が思いついたようにギンに言う。 「そうだ、アンタたちこれから打ち上げやるでしょ?私と香奈も行っていい?」 明日も休みだし!という乱菊に、香奈は渋々頷く。 「じゃあ決まり!さ、今日も飲むわよ〜」 昨日もあれだけ飲んだくせに…と呆れながらも、香奈は乱菊についていった。 用意された居酒屋に着き、香奈は乱菊の隣でグラスを傾ける。 「香奈さんってレコード会社で働いてるんスね〜」 もう片方の隣に座るのは、檜佐木修兵。 ギンのバンドのギターだ。 『貴方たちだって普段は働いてるんでしょ?』 「はい、俺はアクセサリーショップで。ちなみに、市丸さんはそこのオーナー兼デザイナーなんですよ」 ね?とギンに視線を向けると、ギンは照れたような表情を見せる。 「そないに大層なもんやないけどなァ〜」 『そんなことないよ、凄いじゃない』 「なんや香奈に褒められると余計に照れるわァ〜」 そう言って笑った顔は、幼い頃と変わってないな。 香奈は心の中でそう思った。 「そろそろお開きにしますか!」 誰からともなく声が上がり、その場はお開きになった。 「ギン、アンタどこに住んでんの?」 乱菊の問いにギンが答えた場所は、香奈の家のすぐ近くだった。 「香奈の近所じゃない!送ってってあげなさい!」 『私は別にいいって…』 断ろうとする香奈に乱菊は耳元で囁いた。 「いいじゃない、久しぶりの再会なんだし、ゆっくり話でもしなさい」 それじゃあ月曜にね!と手を振り去って行く乱菊。 二人残されたギンと香奈は顔を見合わせる。 「アイツも昔っから変わらへんなァ…」 『昔からああだったの?』 思わず笑ってしまう二人だった。 そして帰り道、二人は別れてからのことを話していた。 ギンは高校を卒業後、デザイナーになるためにアシスタントをしていたらしい。 そして20歳を過ぎた頃、東京に出てきて今の店を持ったという。 対する香奈は大学まで進み、今の会社に入った。 「香奈も大人になったなァ〜。こないに綺麗になるとは思わへんやった」 『ギンこそ、かっこよくなっちゃって』 笑いながら話す二人の姿は、幼い頃の二人と重なった。 香奈の家が近づいてきた頃、ギンが突然立ち止まった。 『どうしたの?』 香奈が問うと、ギンはすぐそこのコンビニを指差す。 「ちょっと飲み直さへん?明日も休みなんやろ?」 先ほどの居酒屋ではほとんど話もできずにいたため、香奈はこの申し出を受けることにした。 『それなら私の部屋でどう?もうすぐそこだし』 そう言って目の前のマンションを指差す。 すると、ギンは驚いたような表情をした。 「ボクの家もあそこやで?」 prev//next back |