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「それで、アンタが男嫌いになったのね〜」



香奈の話を聞き終わり、乱菊が納得したような表情を見せる。



『別にそんなんじゃないって。だいたい、小学生だよ?可愛い恋の思い出よ。ね?』



遠い昔の出来事だと自分に言い聞かせながら、香奈はギンを見る。



「思い出、なァ…」



浮かない表情のギンはぽつりと呟いた。
すると、乱菊が思いついたようにギンに言う。



「そうだ、アンタたちこれから打ち上げやるでしょ?私と香奈も行っていい?」



明日も休みだし!という乱菊に、香奈は渋々頷く。



「じゃあ決まり!さ、今日も飲むわよ〜」



昨日もあれだけ飲んだくせに…と呆れながらも、香奈は乱菊についていった。
用意された居酒屋に着き、香奈は乱菊の隣でグラスを傾ける。



「香奈さんってレコード会社で働いてるんスね〜」



もう片方の隣に座るのは、檜佐木修兵。
ギンのバンドのギターだ。



『貴方たちだって普段は働いてるんでしょ?』

「はい、俺はアクセサリーショップで。ちなみに、市丸さんはそこのオーナー兼デザイナーなんですよ」



ね?とギンに視線を向けると、ギンは照れたような表情を見せる。



「そないに大層なもんやないけどなァ〜」

『そんなことないよ、凄いじゃない』

「なんや香奈に褒められると余計に照れるわァ〜」



そう言って笑った顔は、幼い頃と変わってないな。
香奈は心の中でそう思った。



「そろそろお開きにしますか!」



誰からともなく声が上がり、その場はお開きになった。



「ギン、アンタどこに住んでんの?」



乱菊の問いにギンが答えた場所は、香奈の家のすぐ近くだった。



「香奈の近所じゃない!送ってってあげなさい!」

『私は別にいいって…』



断ろうとする香奈に乱菊は耳元で囁いた。



「いいじゃない、久しぶりの再会なんだし、ゆっくり話でもしなさい」



それじゃあ月曜にね!と手を振り去って行く乱菊。
二人残されたギンと香奈は顔を見合わせる。



「アイツも昔っから変わらへんなァ…」

『昔からああだったの?』



思わず笑ってしまう二人だった。
そして帰り道、二人は別れてからのことを話していた。
ギンは高校を卒業後、デザイナーになるためにアシスタントをしていたらしい。
そして20歳を過ぎた頃、東京に出てきて今の店を持ったという。
対する香奈は大学まで進み、今の会社に入った。



「香奈も大人になったなァ〜。こないに綺麗になるとは思わへんやった」

『ギンこそ、かっこよくなっちゃって』



笑いながら話す二人の姿は、幼い頃の二人と重なった。
香奈の家が近づいてきた頃、ギンが突然立ち止まった。



『どうしたの?』



香奈が問うと、ギンはすぐそこのコンビニを指差す。



「ちょっと飲み直さへん?明日も休みなんやろ?」


先ほどの居酒屋ではほとんど話もできずにいたため、香奈はこの申し出を受けることにした。



『それなら私の部屋でどう?もうすぐそこだし』



そう言って目の前のマンションを指差す。
すると、ギンは驚いたような表情をした。



「ボクの家もあそこやで?」

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