>> 2 そのバンドの演奏が終わり、メンバーがフロアに下りてきた。 乱菊は幼馴染の元へと向かう。 「ギン、アンタやるじゃない!意外と良かったわよ!」 「“意外”は余計や乱菊。あら、そちらのお客さんは?」 乱菊の隣に居た香奈を指してギンは言った。 「この子は私の同僚で…「もしかして香奈!?」」 香奈の名を知っていたギンに乱菊は驚き、香奈を見る。 「何よ香奈、アンタギンと知り合いなの?」 『知り合いというか…』 「何言うてんの乱菊、香奈はボクの初恋の人や!」 「初恋ぃーーーー!?」 どういうことなのよ!?と詰め寄ってくる乱菊に香奈は溜息を零す。 『初恋って言っても子供の頃の話よ。小学生の時』 ゆっくりと香奈は話し出した。 香奈が小学校六年になる春、親の都合で京都へと転校することになった。 そこで出会ったのが銀髪の少年、市丸ギンだった。 「香奈いうんやろ?ボクはギンや、よろしゅうな!」 『……よろしく』 元々人見知りの激しい香奈。 加えて見知らぬ土地での生活ということもあり、なかなか友達はできなかった。 そんな中、唯一香奈に話しかけてきたのがギンだったのだ。 「香奈は東京から来たんやろ?ええなあ〜」 ニコニコと笑いながら話すギンの隣は居心地がよかった。 初めは言葉少なだった香奈も次第にギンに心を開いていった。 「ボクな、香奈のこと好きや」 『私も…ギンのこと好きだよ』 いつしか隣に居ることが当たり前になっていた。 「香奈、目瞑ってみ?」 ギンに言われて目を瞑ると、温かいものが唇に触れた。 「ボクがずっと傍に居ったるからな」 紡がれたギンの言葉は、香奈の心に深く染み入った。 しかし、その言葉が果たされることはなかった。 二人が中学生になる頃、香奈は再び東京へと戻ることになったのだ。 prev//next back |