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そのバンドの演奏が終わり、メンバーがフロアに下りてきた。
乱菊は幼馴染の元へと向かう。



「ギン、アンタやるじゃない!意外と良かったわよ!」

「“意外”は余計や乱菊。あら、そちらのお客さんは?」



乱菊の隣に居た香奈を指してギンは言った。



「この子は私の同僚で…「もしかして香奈!?」」



香奈の名を知っていたギンに乱菊は驚き、香奈を見る。



「何よ香奈、アンタギンと知り合いなの?」

『知り合いというか…』

「何言うてんの乱菊、香奈はボクの初恋の人や!」

「初恋ぃーーーー!?」



どういうことなのよ!?と詰め寄ってくる乱菊に香奈は溜息を零す。



『初恋って言っても子供の頃の話よ。小学生の時』



ゆっくりと香奈は話し出した。


香奈が小学校六年になる春、親の都合で京都へと転校することになった。
そこで出会ったのが銀髪の少年、市丸ギンだった。



「香奈いうんやろ?ボクはギンや、よろしゅうな!」

『……よろしく』



元々人見知りの激しい香奈。
加えて見知らぬ土地での生活ということもあり、なかなか友達はできなかった。
そんな中、唯一香奈に話しかけてきたのがギンだったのだ。



「香奈は東京から来たんやろ?ええなあ〜」



ニコニコと笑いながら話すギンの隣は居心地がよかった。
初めは言葉少なだった香奈も次第にギンに心を開いていった。



「ボクな、香奈のこと好きや」

『私も…ギンのこと好きだよ』



いつしか隣に居ることが当たり前になっていた。



「香奈、目瞑ってみ?」



ギンに言われて目を瞑ると、温かいものが唇に触れた。



「ボクがずっと傍に居ったるからな」



紡がれたギンの言葉は、香奈の心に深く染み入った。
しかし、その言葉が果たされることはなかった。
二人が中学生になる頃、香奈は再び東京へと戻ることになったのだ。

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