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いよいよライブが始まった。
客席の照明が落ち、大きな歓声とともにメンバーが出てくる。



「こんばんは〜Faustです〜」



中央に立つのは真子。
ギタリストでありながらボーカルもこなす彼は、あの関西訛りで挨拶をする。



「ほんじゃ、行くで」



真子の合図とともに演奏が始まる。
decideとよく似た曲調は、全ての曲を真子が手がけていることを思わせる。
私は思わず真子の声を頭の中で自分の声に置き換える。
私ならこう歌うのに。
ここは私もこんな風に歌うだろうな。
もう何年もマイクを手にしていないというのに、私は思わず曲を口ずさんでいた。



「次がラスト〜」



本編のラストだ。
食い入るようにステージを見つめていた私は、周りにどんな風に映ったのだろうか。
最後の曲が終わると、メンバーはステージを去った。
私と乱菊も下へと向かう。



『とりあえず、お疲れ様』



手に持っていたタオルを真子に渡す。



「何や、変な気分やなァ。昔やったら二人で汗だくになっとったんに」

『何馬鹿なこと言ってんの。まだアンコールもあるんだからね』



いつのまにか、昔のように自然に真子と会話をしていた。
アンコールは二曲。
その最後の曲が新曲だ。



「新曲、楽しみにしとけや」



そう言い残すと、真子は再びステージに戻っていった。
客席に響くアンコールの声。
その声に包まれてメンバーが再びステージに姿を現した。
一曲目が終わり、次がいよいよ本当のラスト。



「皆さん、今日は本当にありがとうございました。次がほんまのラストです。この曲はゲストギタリストを呼んでます。曲を作ったんは俺ですけど、歌詞だけはどうしてもこの人に書いてほしくてお願いしました。どうぞ〜」



ゲストギタリスト?
私はそんな話聞いていない。
横の乱菊を見ると、にっこりと微笑んでいる。
もしかして…乱菊は知っていたのだろうか。



「市丸ギンサンです。知っとる人も居ると思いますけど、LUSTYのデザイナーさんです。俺らのアクセサリーもデザインして貰いました。じゃ、行きますよ〜」



ギン!?
何で此処に!?
混乱する私を他所に、演奏が始まった。
そしてまた、私は驚いた。



「おい、ローズこの曲…」

「ふふ、真子も粋なことするよね」



聞こえてきたのは聞き覚えのある曲。
私たちのバンド、decideが最後に作った曲だ。
けれども、この曲に歌詞はない。
いや…つけられなかったのだ。
曲が完成する前に、私たちは解散してしまったから。



『嘘…』



照明のせいか、はたまた違うもののせいなのか、私の視界は既にぼやけ始めていた。

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