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香奈がボクの前から居らんようになって一ヶ月。
ボクはろくに寝れもせん毎日を過ごしとる。
アクセサリーのデザインかて全然思いつかへんし、仕事にも支障出まくりや。
乱菊に聞いても香奈は元気やとしか教えてくれへんし、会社に行ってみても門前払いされる。



「なんやのこれ?」



ある日、乱菊から渡された封筒の中を見ると、手紙と一緒にCDが入っとった。
平子サンがボクに渡してくれ言うたらしい。
ボクは正直平子サンが羨ましかった。
仕事とはいえ毎日のように香奈に会ってるんやし、もしかしたら香奈もまだ平子サンのことが好きなんやないかとか、柄にもなく不安に思うてたんや。



「Faustの新曲よ」

「なしてそないなもんをボクに?」



Faustの新曲やて。
香奈が居らんようになってから、LUSTYの曲も詞も書けんようになってしもた。
やっぱりボクへのあてつけかいな。



「手紙、読んでみなさい」



乱菊に言われて手紙を読むと、そこに書かれていたのは予想もしないことだった。



「乱菊…これどういうこと?」

「さあね。でも…真子からのお礼らしいわよ。アクセサリーのデザインをしてくれたお礼」



ボクはさっさと会計を済ませると、乱菊を置いて店を出た。
ボクはほんまにアホや。





「ったく、俺は何しとるんや…」



Faustのデビューまであと一週間。
俺は昔のバンド仲間のローズと久しぶりに飲みに行った。



「真子も本当馬鹿だよね」

「うるさいわ」



自分がどうしようもないアホやいうことくらいわかっとるっちゅうねん。
せっかく香奈と市丸サンが上手くいってないっちゅうのに。



「でも、真子の思いもわかる気がするよ」



横で飲んどるローズは、俺と同い年やのに何だか大人に見えた。
…癪やけどな。



「で、デビューライブにはもちろん僕も招待してくれるよね?」

「当たり前やないか。ほら、チケット」



後一週間。
一週間で俺の長かった恋も終わりや。
これでええんや。
香奈が笑っとったらそれでええ。

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