>> 3 「ギン、珍しいじゃないアンタから誘ってくるなんて!」 そう言ってボクの横に座ったのは腐れ縁の幼馴染。 今日はボクの奢りや。 そう言ったら飛んできた。 「何か今日雰囲気違うなァ〜」 「そう?今日は大事な商談があったからちょっと真面目にしてみたのよ」 横の幼馴染…乱菊はいつもと違う雰囲気。 長い金髪を纏め上げて、スーツもえらい地味なん着とる。 似合わんわ… 「ちょっとアンタ、今似合わないとか思ったでしょ!?」 「そんなん思うてへんって」 何やコイツ、人の心読めるんかいな。 全く、女いうんは怖いなァ… 「で、アンタが私を誘うくらいなんだから、何かあるんでしょ?」 そないなことまでお見通しなんか。 ボクは乱菊に昼間のことを話した。 「はぁ?アンタ馬鹿じゃないの?」 馬鹿はないやろ、馬鹿は。 人がこんなに悩んどるんに… 乱菊の話やと、どうやら香奈が昔平子サンと付き合うてたんは本当らしい。 ほんで、decideのボーカルをしてたことも。 「でも、香奈が浮気なんてあり得ないわよ。あの子、ギンのこと大好きだもの」 それや、その言葉が聞きたかったんや。 ボクの胸のつかえは早くも取れたような気がした。 でもそれはボクだけやったんやって、後から知ることになる。 ギンの帰りが遅くなると聞いて、一人で夕飯を済ませてきた。 その帰り道、一人歩く。 『あっ、ギン…』 目の前の居酒屋から出てきたのは銀髪。 銀髪なんて珍しいから、ギンに間違いないだろう。 声をかけようと近づこうとすると、店の中からもう一人出てきた。 『女の人?』 暗闇ではっきりとは見えないが、背の高い女性。 何やら楽しそうな雰囲気だ。 頭の中で昼間の女に言われた言葉がぐるぐると巡る。 『私の他にも付き合っている人が…』 嘘だ嘘だ嘘だ。 目の前の光景を信じたくない。 呆然と立ち尽くしていると、二人はいつの間にか夜の闇に紛れて見えなくなっていた。 何かが崩れていくような音がした。 prev//next back |